ウガンダのコーヒーを安房で飲みましょう。
PDF房日新聞 2018.09.01
NPO法人安房文化遺産フォーラム理事 河辺智美
安房の高校生がウガンダ共和国の子どもたちを支援する交流活動は、今年で24年目を迎えました。安房南高校の生徒会活動から始まり、統廃合を経て安房高校JRC部が継承し、さらに安房西高校JRC部にバトンが手渡されています。
この間、活動に関わった高校生は延べ400人を超え、中には母子2代にわたって参加している方もいます。NPO法人安房文化遺産フォーラムとNGOウガンダ意識向上協会(CUFI)が窓口となり、かにた婦人の村や安房・平和の美術展、館山病院健康友の会など多様な市民ネットワークの応援を得ながら、信頼と友情を育んできました。
ウガンダは、「アフリカの真珠」といわれるほど美しく、自然豊かな国ですが、今なお多くの子どもたちが貧しい状況にあります。CUFIでは、子どもたちが希望をもって心豊かに生きられるよう教育を与え、コミュニティの生活を支援しています。安房からの継続的な支援により、2000年には安房南と命名された洋裁学校も設立され、職業自立訓練も行われています。
昨年は、孤児の送迎や生活物資の運搬用車両が野生の水牛とぶつかって故障したため、緊急の支援依頼がありました。インターネットを通じたクラウドファンディングや房日新聞などを通じて募金協力を呼びかけたところ、多くの賛同者から温かい募金が寄せられました。目標額120万円を達成し、現地ではトヨタハイエースの中古車両を購入することができたと、喜びの声が届いています。
このとき、館山で珈琲焙煎工房カフェポラリスを経営する鈴木正博さんは、ウガンダのコーヒー豆を仕入れてチャリティ販売を企画し、協力してくださいました。コーヒーベルトと呼ばれる赤道直下に位置し、標高が高く昼夜の温度差が大きいウガンダでは、自然栽培の良質なコーヒー豆を栽培することができ、アフリカ第二位の生産量を誇っています。
これを契機として、ウガンダのコーヒー豆をフェアトレード(公平貿易)で取り扱い、継続的な支援につなげられないだろうかと、鈴木さんから提案がありました。フェアトレードとは、開発途上国に暮らす生産者から公平な価格で商品を購買し、経済的自立を支援する国際協力の方法です。新しい支援のかたちが生まれ、これまで続いてきた交流の輪がさらに広がる可能性が期待できます。そこで、鈴木さんとNPO役員の愛沢香苗さんと私の3名がウガンダを訪問し、CUFIの活動状況やコーヒー農園を視察することになりました。
ウガンダコーヒーは風味豊かで、自然にも体にもやさしいといわれています。その魅力を広く知っていただきたいと思い、安房地域内の喫茶店などに呼びかけたところ、10数店舗の皆さんが快く賛同してくださいました。そこで、10月を「ウガンダコーヒー月間」と位置づけて、各店舗でウガンダコーヒーの提供やコーヒー豆の販売をおこなうキャンペーンを展開することとしました。奇しくも、10月1日は「国際コーヒーの日」であり、9日は「ウガンダ独立記念日」にあたります。7日は館山病院感謝祭でおこなうウガンダ支援バザーでもコーヒー豆も販売します。
この機会に、安房の皆さんが美味しいウガンダコーヒーを味わい、地球の裏側の生産者と販売者と私たち愛飲者がつながることを通じて、市民交流がさらに深まり、貧しい子どもたちが笑顔で学校に通い続けられるよう、ささやかな力添えになれば幸いです。
詳細は帰国後に報告し、ご案内しますが、この企画はコーヒー豆の販売・提供ばかりでなく、バザー品の提供や募金など広く協力を求めています。店舗経営者や個人の皆様が、この趣旨に賛同してくださる場合は、ご連絡をお待ちしています。
問い合わせはNPO法人安房文化遺産フォーラム(0470-22-7281)へ。
3校にわたる支援のバトン
千葉県立安房南高校 1994~2007 ※2008年3月、安房高校に統廃合
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千葉県立安房高校JRC部 2008~2012
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私立安房西高校JRC部 2013~現在
戦争遺跡など地域教材を活用した平和学習を受けた安房南高校の生徒たちは、内戦直後のアフリカ・ウガンダで孤児の自立を目指しているウガンダ意識向上協会(スチュアート・センパラ代表)を通じて、1994年より支援活動に取り組み始めました。
バザー売り上げや募金を毎年送り続け、2000年にはウガンダに職業訓練施設が完成し、「安房南洋裁学校」と命名されました。残念ながら、館山の安房南高校は創立100年の節目に統廃合となってしまいましたが、地球の裏側にはその名前がついた学校が今もあります。草の根の活動は、統合先の安房高校JRC(青少年赤十字)部に引き継がれ、ウガンダの子どもたちとの交流が続きました。現在は、私立安房西高校JRC部にバトンがつながり、取り組みは四半世紀以上におよんでいます。
そしてNPO法人安房文化遺産フォーラムがウガンダとの交流窓口となり、「かにた婦人の村」や「安房・平和のための美術展」、「ウガンダコーヒー月間協賛店舗」「館山病院健康友の会」「年金者組合安房支部」などと連携し、高校生と市民が力を合わせ、毎年約1,000ドル送っています。
卒業生たちの声 / Voices from Japan
ウガンダ支援活動を通して学んだこと/大変だったこと/楽しかったこと
Learnings, difficulties and pleasures through Uganda supportive activities
文化祭の支援バザーでは、「かにた村」や保護者、地域の人から集まった服や雑貨などの仕分け、値札付け、売り場の配置、商品出しなどが大変でした。また、販売の時にどうやって商品を並べたら見やすいか・買いやすいか、相手の立場・目線に立って考えることが大切ということを学びました。こうした経験は、普段の授業では学べないことです。(安房南高1994年度卒)
In support bazaar at the school festival, it was very hard for me to classify clothes and sundry goods, put price tags, arrange counter and so on. I learned it is important to stand other person’s position and their eyes because we need to think arrangement of bazaar goods. I think we cannot learn these experiences in usual classes.
(Graduate of Awa-Minami High School in 1994)
卒業時に自分たちが着たジャージを送りました。そのジャージをウガンダの子どもたちが着ている写真を卒業後に見たときは驚きました。 (安房南高1994年度卒)
When I graduated from high school, I sent my jersey. I was surprised photos which children in Uganda wear it. (Graduate of Awa-Minami High School in 1994)
ボランティアはお金になるわけではないですが、写真を見ることで励みになります。喜んでくれている人がいるというのが目に見えます。一方で、当時は無我夢中で、やらされている感もありました。でも、現地の人のことを考えたら、簡単な気持でできないと思いました。今ウガンダ支援を振り返ると、安房南から安房へ、安房西へと続けていってくれていることに感謝の気持ちがあり、20年も続いてきたのは一人の力だけでは無理で、「すごい」という言葉だけでは済まないなと思います。ウガンダのセンパラさんも、高校が変わりながらも、20年も一緒にやってくれていることが嬉しいです。 現在は、高校を卒業して、家庭を持ち、高校生の時とは立場が違うけれども、何か手伝いできることがあればと思います。自分が何かすれば、自分の子どもも見てくれているだろうし、関心を持ってくれるのではないかなと思います。そして、思ったことや感じたことを、行動に移せること・移すことが大事なのではないかと思います。 (安房南高1994年度卒)
Although I don’t get any money from a volunteer work, I receive encouragement by seeing photos. Now, I reflect on Uganda support activities, I have gratitude for junior students of Awa-Minami, Awa, and Awa-Nishi High School. I also have gratitude for Mr. Sempala. I’m so happy he has worked together with us for 20 years. Now, I graduated from high school and had a good time with my family. I hope I can be of any help. If I get involved in some activities, my children will look at my attitude and show interest. (Graduate of Awa-Minami High School in 1994)
先輩が続けてきた活動を引き継いだ支援が実って、現地に「Awa-Minami洋裁学校」ができ、ホッとした感覚がありました。学校ができたことで、一部の先生方には、「活動を終わりにしよう」「ひと区切りつけよう」というような雰囲気があり、活動を続けていけるのかな、という不安があったのを覚えています。 (安房南高2000年度卒)
I was relieved when “Awa-Minami Tailoring School” was built there. I remember I felt anxiety that support activities would continue after this even though our support bore fruit by constructing a tailoring school. (Graduate of Awa-Minami High School in 2000)
自分の頑張ってきたことは、力になります。ウガンダ支援は「してあげたこと」ではなく、「自分のため」でもあります。高校時代のあの頃あれだけ頑張れたのだから、社会人になった今はもう少し頑張れるかなという励ましになります。昔の自分に励まされます。 (安房南高2000年度卒)
I have addressed Uganda support activities for myself because my hard work encourages me. I became a member of society, and now what I did in my high school days encouraged me. (Graduate of Awa-Minami High School in 2000)
活動に対しては、義務というより委員会の枠を越えてやっていました。みんなの眼がウガンダに向いていて、目的が同じ仲間だったので、活動は楽しかったです。終わってホッとして、お金を送った時の達成感はなんとも言えませんでした。嬉しいような…バザーをやっただけで子どもたちが喜んでくれる…。それも外国、遠い地で喜んでいる。やったからこそ得られた宝物だなと思います。 (安房南高2000年度卒)
I enjoyed support activities with my friends having same purpose for Uganda. When we sent funds, I felt accomplishment. I’m so happy. There are children who are delighted in foreign country by our support bazaar. This is my pleasure.(Graduate of Awa-Minami High School in 2000)
ウガンダ支援に関わっていた先輩たちが 安房南高校へ来た時、「まだ続いていたんだ」といったセリフがすごく印象に残っています。まさか、今、自分が同じセリフを言うことになるなんて思っていませんでした。 (安房南高2000年度卒)
When I was a high school student, my senior students were involved in Uganda support activities. They were surprised and told me that “Is the support activities still continued?” I did not except that I have said the same thing for junior students now.(Graduate of Awa-Minami High School in 2000)
英語の授業で手紙を書いたか…あまり覚えていませんが、「Awa-Minami洋裁学校」でミシンの前に座る 子どもたちの写真を見たときは、感動と衝撃、そして鳥肌が立つくらいの気持ちでした。ちゃんと目に見えて支援が届いているということを実感しました。同時に、この学校へ来られない子どもたちもたくさんいることに、せつなさと、どうしようもならない苦しさがありました。複雑な気持ちでした。まだまだ内戦があり、怖い思いをしている子どもたちがたくさんいる…自分たちより年下なのに、一日一日を精一杯生きている…。 日本にいて、贅沢な暮しをしていて、戦争の怖さも貧しさも知らないで、支援することが果たしていいこと なのか?と考えた時期もありました。でも「送ってもらった鉛筆で書いたよ」「将来医者になりたい」「先生になりたい」といったウガンダの子どもたちからのメッセージを見て、まっすぐで明るくて、大人っぽくて…。 子どもたちの夢が消えてしまうことのほうが悲しいことだと思いなおしました。できることしかやっていない、できる範囲でいいんだ、と改めて気づかされたような気がしました。 (安房南高2000年度卒)
I felt impression and got gooseflesh when I saw photos of “Awa-Minami Tailoring School” and children who sit in front of sewing machine. I realized with own eyes that our support reach children, at the same time, I felt painful that there are still a lot of children who cannot go to the school. I had mixed feelings. There are children who fearful by civil war…. They live desperately…. I spend generously on my life, and I do not know fear of war. I was bothered it is right in supporting, or not. (Graduate of Awa-Minami High School in 2000)
内紛による影響を受け、銃や戦闘機を描いた子の絵を初めて見た時は胸が痛みました。私達がウガンダという国を知り、国の状況を把握して、先輩方の活動を続けることに意味があると思います。そしてウガンダ支援を引き継いでくれた安房西高のJRC部のみなさんに感謝しています。千葉県の房総で、高校時代にアフリカのウガンダと関わることができるのは本当に貴重なことだし、なかなか無いと思います。私は、進んだ大学の学部もウガンダ支援がきっかけであったし、今所属しているボランティア団体もJRC部の活動が影響しています。これを機に支援することの意味や国外だけでなく国内(身近なところ)にも目を 向けることも大切と思います。(安房高2012年度卒)
My heart ached to see drawings by children depicting guns and fighters. I think it is important for us to continue support activities by understanding Uganda. And I have gratitude for Awa-Nishi High School JRC club. I think it is valuable for high school students to think of Uganda. I entered the faculty of the present university by the influence of Uganda support activities and I joined volunteer circle there by the influence of JRC club. (Graduate of Awa High School in 2012)
魚一匹あれば1日食べつなげることができる。
しかし、魚の取り方を教えれば一生食べていくことができる。
「知識は力なり」ということわざを心に刻み、活動をしています。
「何かを与える」というよりも、「活動や体験」を通して、
「(知識や技術など)を得られる・身につけられる」ように、
地域の人びとともに取り組んでいます。
⇒ウガンダ通信
安房南洋裁学校
・裁縫技術指導
・ハンドメイド製品づくり
・衛生管理(トイレ建設)
・校内で薬局、生活雑貨店の経営
キタリア小学校
・子ども(孤児)の教育支援
・学校給食支援
・家畜、家禽管理指導
・野菜づくり指導
カウム農場
・有機農業の実践と指導
・松の木の栽培と販売
・環境保全
北部グル県メデ村
・子ども(孤児)支援 …就学・進学、奨学金
・食糧支援、日用品支援
・保護者(後見人)への支援 …子供の教育相談、農業指導、生活支援
・コミュニティへの支援
支援先の概要
団 体 名 ウガンダ意識向上協会(Consciousness of Uganda Foundation, INC.)
設 立 年 1986年
代 表 者 スチュアート・センパラ(Stuart Sempala)
活動場所 …⇒ 詳細
・安房南洋裁学校 (カンパラ)
・キタリア小学校 (ワキソ県)
・カウム農場 (ルウェロ県)
・北部のメデ村 (グル県)
活動内容 …⇒ 詳細
① 孤児(子ども)支援
文房具・生活用品の支援、学校送迎の支援、授業料の支援、孤児の家の建設・維持管理
給食プロジェクトの実施、鶏やヤギなどの飼育と管理指導
② 若者の自立支援
洋裁技術の指導、大工仕事の指導(トイレ、家建設) など
③ コミュニティ支援
有機農業の実践、孤児の保護者への支援 など