【房日投稿】230430_寺崎裕則氏の訃報に寄せて

(房日新聞2023.4.30付)

 過日、南総文化ホールで開催した「房州とイタリアを愛した画家・寺崎武男生誕140年」の事業において、作品資料展は420名、シンポジウムは130名が来場されました。三男の寺崎裕則氏より託された2000枚のハガキと数十冊の手帳やスケッチ帳を分析調査し、明らかになったことを報告書にまとめ、発表することができました。ご支援くださった多くの皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

その直後の4月7日、寺崎裕則氏が天寿を全うし、ご逝去されました。昭和8年生まれの裕則氏は、日米開戦前に東京赤坂から館山市西ノ浜へ移り住み、父武男が美術講師をしていた同時期に安房高校に在学していたといいます。学習院大学から文学座演出部へ入り、後に三島由紀夫とともに劇団浪漫劇場を立ち上げました。おもにオペラと歌舞伎の演出を手がけ、日本オペレッタ協会を設立しました。父武男の描いたベネツィアの風景画をもとに巨大な舞台幕を製作し、南総文化ホールでオペレッタ『ヴェニスの一夜』を上演しています。父子二代にわたり、東西文化の融合を目ざすとともに、裕則氏は父武男に関する研究者でもありました。

私たちは氏の想いを受け継ぎ、ご生前のうちに調査研究の成果を報告できたことに安堵しています。この報告書は、オンラインショップ「館山まるごと博物館」で販売していますので、引き続き、館山ゆかりの芸術家を多くの方に知っていただければ幸いです。

あらためて、心よりご冥福をお祈りするとともに、感謝を捧げます。

 

(NPO法人安房文化遺産フォーラム 共同代表 池田恵美子)