2010年度の事業
2010年度 事業計画
(a)引き続き保存運動の「第5段階」とする
●保存運動の「第5段階」●
1996年4月に保存運動が始まって以来、15年目に入って大きな転機をむかえている。この間、行政機関や文化関係団体、NPOなど幅広く協力関係をつくり、歴史的風土と文化財を活かした『まちづくり』を通じて、里見氏城郭群の国指定史跡化の方向性をさぐってきた。
2005年3月、関係者の努力によって市道8042線問題も解決され、翌年1月に館山市長から地元関係者・地権者への説明会をスタートに国指定史跡化にむけての取り組みがおこなわれ、教育委員会のもとで調査検討委員会が設置された。そして2008年、2010年と文化庁への「報告書Ⅰ・Ⅱ」が提出されるとともに、引き続き共有地管理組合脇田氏を中心に共有地関係の所有者確認調査がおこなわれ、地元地権者の同意を得るという困難な作業に取り組んでいる。その努力に敬意を表したい。(国庫補助2ヵ年事業:2006年度に館山市稲村城跡調査検討委員会設置され、2008年3月『報告書』を文化庁に提出するものの再提出となり、2009年度に再度調査検討委員会が設置され、新体制で『報告書Ⅱ』を作成し文化庁に提出した。)
「里見氏城郭群の国指定」史跡をめざす運動のなかでは、広域の自治体行政や安房地域の活性化につながるように位置づけ、全国の「国指定」史跡化の方法やプロセスを学びながら、活用化については実際に現地を見学してきた。
なお、「まちづくり」の実際面では、2004年以降NPO法人安房文化遺産フォーラム」(代表 愛沢伸雄)と連携・協働しながら、行政関係とともに市民参加による地域の活性化の動きをつくり、保存運動を展開してきた。
2009年6月14日に、地元稲地区町内会において「稲村城跡利活用委員会」が創設され、稲村城跡の利活用を円滑に図るための地域からの声をまとめていく機関がつくられた。地域から「国指定史跡」への史跡化・整備事業にむけての動きは、大変重要なことで関係者のご努力に敬意を表したい。今後、地域の人々の動きから保存運動を展開していくことが望ましい。その意味でも、15年におよぶ私たち「保存する会」の活動をどうしていくかを考える時期に来たとも言える。これまで関わってきた方々のご意見やアドバイスを踏まえて、来年の総会においては、結論的な方針を明確にしていきたいと思っている。
(a)「国指定」に対して、広域自治体間での連携・協力をとり、各自治体の文化行政との兼ね合いを考えながら、会の活動への理解と協力を得る。なかでも地権者や館山市稲地区の方々に、稲村城跡「史跡化」の取り組みが、安房地域全体の里見氏城郭群の「国指定」への重要なステップになっていくということ、そして里見氏の歴史・文化が文化遺産として、末永く地域に根ざしていく契機になっていくことへの理解を得ることに努めてきた。
このことでは、稲地区の町内会において活動されている「稲村城跡利活用委員会」(脇田安保委員長)のご努力に深く敬意を表するとともに、今後、行政当局とともにすすめられる息の長い史跡化と整備事業に、地域から貢献されることを願っている。
(b) 里見氏関係文化財の活用の点では、「NPOフォーラム」と連携・協働
体制を図りながら「あわ・がいど-里見ガイド」を養成し、稲村城跡をはじめとする里見氏文化財をめぐるガイド・コースを設定し、地域の文化遺産を活用した具体的な地域の活性化の動きをつくっていきたい。
(c)「国指定」にむけて、各地元・地権者への働きかけをおこなうが、里見氏城跡群に関わる市民団体や地域の歴史文化団体に呼びかけて、情報を交換し共同で取り組むネットワーク(仮)が結成されるよう、「NPOフォーラム」と連携・協働しながら働きかけていくことを展望する。
(d) 文化財を活かした「まちづくり」・地域振興プランづくりがなされるように、 「NPOフォーラム」の取り組みと連動しながら、稲村城跡「国指定」にすることで、地域振興の面でも大きな意義があることを伝え、文化財関係団体や商工・観光関係者の理解や協力を得る。
(e) さまざまな分野に呼びかけをし、「国指定」史跡化への理解を広げていくために、本会独自に他地域にある「国指定」城跡を視察し、史跡化のプロセスや「国指定」のプランなどを調査研究する。
●(b)当面の事業推進●
① 従来からの講演会や催し・フィールドワークをおこない、とくに調査・研究の取り組みやガイド・人材育成の面での役割を「NPOフォーラム」と協働しながら取り組んでいく。
2011年2月11日(金・祭日)
「里見の道ウォーキング」“岡本城跡から宮本城跡へ”
② 文化財を活用した「地域おこし」として、里見氏の歴史・文化や『里見八犬伝』は、「地域づくり」や観光にとっても極めて重要な施策であり、「里見氏城郭群」の国指定化は安房地域にとって起爆剤になることを訴えていく。
なお「地域づくり」の点では、「NPOフォーラム」がおこなう事業などで協働体制(「あわ・がいど」など)を組んでいく。
稲村城跡はじめ里見氏関連文化財にかかわる見学会でガイドを依頼された場合、「NPOフォーラム」と連携・協働しながら、積極的に勉強会を開催し、フィールドワークに取り組み、ガイド・人材育成の面で積極的な役割をおこなう。
③ 会員が実際に「国指定」となっている中世城郭を見学して史跡化にむけての理解を深める。専門家・研究者のアドバイスを受けながら、「国指定」史跡化について、その「国指定」のすすめ方や整備プロセスやなどを学ぶ。なおその際に、稲地区「稲村城跡利活用委員会」の皆さんの活動と協働していく取り組みを基本にしていきたい。
第8回「国指定」城跡見学バスツァー 「飛山城跡と勝山城跡を訪ねる」
11月27日(土)AM6時 夕日海岸ホテル前駐車場 集合
≪参加費5,000円・昼食持参≫
⑤ これまで継続してきた稲村城跡の草刈り(年2回程度)や、見学者や市民の憩いの場として整備(ガイド・コースの案内板)などについて稲地区「稲村城跡利活用委員会」の皆さんの活動などと連動しながら、検討していきたい。
ガイドブック「房総里見氏」と「安房古道をあるく」(各600円)を広く普及する。
稲村城跡「草刈り」 本年度第1回6月5日(土)実施 第2回 10月頃予定
⑥ 稲村城跡の史跡化をすすめるためにも、稲村城跡周辺地域の方々の協力を得て、地域の伝承をはじめ、様々な聞き取り調査をおこなう。また、城郭研究者の支援を受けながら、稲村城跡の外郭部なども調査研究する。
⑦ 歴史関係学会との交流(千葉城郭研究会・千葉歴史学会など)や、里見氏研究者の調査研究団体である「里見氏調査会」への支援など、安房の文化遺産に関する研究会、あるいは勉強のための学習会を継続していく。
また、里見氏研究や城郭研究の専門家・研究者の皆さんによる書籍を紹介するとともに普及し、啓蒙活動を支援していく。
・川名登編「すべてわかる戦国大名里見氏の歴史」 川名登著「房総里見一族」
・館山市立博物館「さとみ物語」(岡田晃司氏)
・滝川恒昭氏「房総里見氏文書集」 ・ 千城研編「房総の城郭」など
・「里見氏調査会」報告書
この地域で、歴史関係の集会や研究会が開催される場合には、保存運動や史跡化の取り組みを伝えるとともに、運動への支援・協力の依頼をおこなう。
「安房歴史文化究会」(会長 天野努氏・事務局石崎和夫氏)
⑧ この15年の保存運動では、全国里見一族交流会の皆様のご支援やご協力をいただいた。今後も全国の里見氏関係の皆さんとの連携を深めながら、里見氏の歴史・文化の普及と、全国のゆかりの地での地域振興や「地域づくり」において、里見氏の文化財の活用を図るために支援・協力をしていきたい。
本会員の里見香華さんを会長に、鈴木恵弘さんを事務局長として「房総里見会」が活動し、県内各地の里見氏ゆかりの方々や里見氏の歴史・文化の普及を願う方々との交流の場になり、里見氏ゆかりの関係者との交流事業がおこなわれている。今後も房総里見会や全国里見一族交流会との連携を図っていきたい。
⑨ 会の冊子や関連書籍の宣伝・販売を積極的におこない、会財政の充実化を図る。会のホームページはないが、「NPO安房文化遺産フォーラム」のHPのなかに、15年間の保存運動や活動を紹介している。
●今後の日程●
2010年 7月10日(土)大井城跡のフィールドワーク(遠山成一氏)
「保存する会」総会 午後1時00分
(九重地区公民館)
11月27日(土)「国指定」見学バスツアー(栃木県)
第8回「飛山城跡と勝山城跡を訪ねる」
2010年 2月11日(金)「里見の道ウォーキング」
“岡本城跡から宮本城跡へ”