【第80回知恵袋講座】240113_「かにた婦人の村」の成り立ちから今、未来へ
語り手:五十嵐逸美さん(かにた婦人の村 施設長)
「かにた婦人の村」の成り立ちから今、未来へ
2024年1月13日(土)13:30~16:00
菜の花ホール
参加費:会員200円、非会員500円(資料,茶菓子代)
【当日資料】
・知恵袋講座レジュメ(五十嵐)
・「売春防止法」
・「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」
「かにた婦人の村」は、売春防止法にもとづく婦人保護施設として深津文雄牧師が1965年に開設しました。諸事情により生活困難な女性たちが、障害の度合いに応じて様々な作業をしながら、支え合って共同生活を営むコロニーです。旧海軍砲台山を払い下げられた丘陵地にあり、敷地内の中腹には「戦闘指揮所」「作戦室」と彫られた額や天井には龍のレリーフが残る戦争遺跡があります。丘の上には、ここで暮らした城田すず子さん(仮名)の証言により1965年に建立された「噫従軍慰安婦」の碑もあります。
安房文化遺産フォーラム代表の愛沢伸雄さんが安房南高校の教員であった1989年、研修の一環として「かにた村」を訪れました。調査研究を深め、世界史の平和教材として授業実践をおこなったことから、戦跡や文化財の保存・まちづくりに発展し、2004年にNPO法人が誕生しました。この間、女生徒たちが「かにた村」のボランティア作業に参加し、深津牧師からウガンダのスチュアート・センパラ氏を紹介され、支援 交流が始まりました。こうした経緯から「かにた村」とNPOは長きにわたり信頼と連携を育んできました。
2022年「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が制定され、「かにた村」は2024年4月から「女性自立支援施設」に生まれ変わります。これに伴う施設の建替えが始まっていますが、諸物価高騰の折、資金不足となり、追加寄付とチャリティ絵画展を企画してNPOも共催となり、会員の皆様にもご協力をいただきました。
【報告概要】
まず売春の歴史から。1585年に秀吉が開いた遊郭に始まり、1900年制定の「娼妓取締規則」では登録すれば「親が娘を売ることもできる」社会だったという。しかし太平洋戦争において、軍により慰安所が戦地に設置されていく。登録された娼妓だけでなく、現地の女性を強制的に集めたことが、戦後の外交上の問題につながっている。
戦後はGHQの指導により公娼制度は廃止され、私娼のみ存続し、赤線とよばれる買春街が成立。明治・大正期よりキリスト教団体を中心に起きていた廃娼運動が実り、1956年に売春防止法が制定された。
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売春防止法にもとづき、保護更生を目ざして設置された婦人保護施設。後に、ストーカー規制法・DV防止法・人心取引対策行動計画の制定に伴う相談支援と保護の業務が加えられる。
売春防止法は処罰法(刑法)であるため、婦人保護施設の位置づけは、刑務所や補導員に準ずる場とされている。しかし実際の業務は、性被害による社会生活の困難や生活困窮を抱えた女性たちの人権回復に向けた福祉的支援であり、法的根拠のギャップが大きかった。法改正を求める運動の結果、人権擁護を主として女性支援に特化した新法が2022年に成立、2024年4月から施行予定。これに伴い、婦人保護施設は「女性自立支援施設」に変わる。
千葉県には独自の事業として、24時間体制ノンジャンルの女性相談窓口があり、安房地域では医療センター内に中核地域生活支援センター「ひだまり」がある。
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傷ついた女性たちの生活自立には心身回復が優先され、本人の気持ちやペースを尊重した寄り添う伴走や、地域住民との協力関係が必要。施設では全職員が、TIC(トラウマ・インフォームド・ケア)の考え方を学び、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の解放をめざす。
▼ TICCこころのケガを癒やすコミュニティ事業
https://www.jtraumainformed-tic.com/index-past
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五十嵐さんの最後のコメント
「人によって棄損された人生は、人によって回復し得るものです。誰かの優しい一言や、眼差しが、傷ついた心の回復の糧になります。生物学的にそんなに強くはない人間が、地球を席巻したのは、〝相互扶助〟という防御力を獲得してきたからです。いま、自分がここにいるまでの長い歴史に思いを馳せて、他者を思いやる気持ちを大事にして生活したいものです。」
【クラウドファンディング継続募集】
かにた婦人の村で自立を目指す女性たちへの伴走者募集!
月々500円・1,000円・3,000円・5,000円・10,000円の応援コースを選択でき、寄付金受領証明書が発行されます。