【房日】230707_卒寿、7冊目の出版 館山の大場俊雄さん

(房日新聞2023.7.7.付) ⇒

潜水器などの漁業史研究をライフワークとしている、館山市那古の大場俊雄さん(90)が、最新著『明治・大正・昭和前期 外国の海に潜った潜水夫』(たけしま出版)を上梓(じょうし)した。

自身7冊目の出版で、今回は「サルベージ」を主体にした。知床半島での観光船の遭難事故にも触れ、その引き揚げ作業でもわが国のサルベージ技術の水準の高さが示されたことにも言及している。

館山市の宮沢書店、インターネット書店で扱っている。税込み1760円。

大場さんは長い間、水産試験場に勤務、アワビ漁業や潜水器を研究。学校教育の場などでも、指導に当たった。

研究対象が漁業史全般にわたるため、房総半島だけでなく全国へ足を運ぶ。野帳を手に、各地を取材する“現場主義”を貫いている。

新著は既刊3冊の続編に当たる。版元の崙書房出版が会社を閉じたため、版元を探したが、同社元社員が旗揚げした、たけしま出版の世話になった。「地域を楽しみ地域に生きる/手賀沼ブックレット」のシリーズ13冊目。

今回、注力したのは「今まで一部しか明らかにされてこなかった日本人による外国でのサルベージ潜水や潜水器使用史にかかわる事実に迫る」こと。

高齢でありながら各地に足を運び、現場での調査を基に脱稿した。大場さんの立ち位置の基本である図録や史料もふんだんに盛り込み、既刊に劣らぬ出来に仕上がった。

大場さんはあとがきで、知床の事故の引き揚げ作業に触れ、自身の研究成果と重ねる。そして、本のまとめにこう振り返る。「調べた結果を公にすることは、調査研究に携わった者の務め」。卒寿、まだまだ筆は擱(お)かない。意気軒高である。

【参考】

房総アワビ移民研究所