戦争遺跡を活用するには安全の確保は欠かせませんが、公開して平和学習などの場にしていくことが大事です。例えば千葉県館山市の「赤山地下壕跡」は旧館山海軍航空隊の施設で、市は史跡に指定して内部を公開しています。
東京湾の入り口に位置する館山市は、首都・東京を防衛するための重要な拠点でした。ここがユニークなのが、そうした歴史を裏づける戦争遺跡を、地域全体の文化遺産の1つに位置づけていることです。
地元のNPO法人「安房文化遺産フォーラム」が掲げているのが、「館山まるごと博物館」。戦争遺跡だけでなく、戦国時代の城跡や明治時代の画家にゆかりのある住宅などの調査や保存運動も進め、これらを組み合わせたスタディーツアーなどを行っています。
館山市も同じような考え方です。現在作成を進めている「文化財保存活用地域計画」に、戦争遺跡を他の文化遺産と一体的に保存・活用する方策について盛り込む方針です。この計画は、地域の文化財を未指定も含めて幅広く継承するためのものです。文化財に指定されていない戦争遺跡の保存と活用を図ることが期待されます。
戦後80年となりますが、まだ知られていない、あるいは十分に調査されていない戦争遺跡は各地にあるはずです。今こそ、できる限りの調査を行う必要があります。そして「かつて何が起きていたかを思い起こさせてくれる場所」、さらには「地域の歴史を語るうえで欠かせない場所」として、保存と活用につなげてほしいと思います。
(高橋俊雄 解説委員)