【房日展望台】150902*「赤い鯨と白い蛇」再上映

「赤い鯨と白い蛇」再上映

(房日新聞2015.9.2)

館山を舞台とした名画「赤い鯨と白い蛇」の上映会が5日、南総文化ホールで開かれる。第19回戦争遺跡保存全国シンポジウム千葉県館山大会のプレイベントとして午前10時から上映が始まる。

この映画は今からちょうど10年前に撮影された作品で、監督が安房南高卒業生のせんぼんよしこ氏、館山の美しい風景を映像作品として全編にわたって見ることができるということで当時大変な話題を呼んだ。2007年に同ホールで行われた上映会は1200人収容できる大ホールが二度満席になり、同ホールから館山バイパス沿いに車の大行列ができた。それでも入りきらず、たしか追加上映が開催されたと記憶している。

そのときにご覧になった方は多いだろうし、その後、DVDで見たという人も多いだろうが、今改めてこの名作を大きなスクリーンで見ることができる機会を得たことは貴重なことである。

せんぼん氏は「戦争はこの映画のテーマではないのですが・・・・・・」と語っている。この映画のテーマは、自分に正直に生きる、そして自分のことを忘れないでほしいということである。

映画は世代も育ちも異なる5人の女性の日常を描く。香川京子演ずる少しぼけ始めておぼつかなくなった老女が、むかし疎開先の館山で知り合い、恋心を寄せた特攻隊将校のことを忘れたくない、忘れてはいけないとう思いを募らせることがストーリーの発端となり、テーマにもなっている。

老女を館山の古民家に連れてくるのが宮路真緒演ずる現代っ子の孫で、彼女が同棲している彼氏の子どもを身ごもっていることを知る。古民家にはこの家を相続している浅田美代子がおり、その娘を演ずる坂野真理は3年前に釣りに行ってくるといったきり帰ってこない父親のことが忘れられない。浅田は夫を忘れるために古民家を取り壊そうとしている。そこへ詐欺まがいの商法で客に追われ、大金を持って逃げている樹木希林がやってくる。樹木は不仲の夫からの電話にでようとはしない。

映画に男性は登場しない。男性はあくまでも5人の女性の日常を通した影として描かれている。そして、撮影時70代半ばで初めて映画のメガホンをとった監督せんぼんよしこ氏は、同じように、ストーリーの影のテーマとして戦争を浮き彫りにしている。

2015.9.2(F)