シンポジウム 移民がつなぐ太平洋まるごと博物館

明治期より太平洋をわたり、冷たい海で器械式潜水を導入し活躍したアワビ海士と、画家らのつむぐ物語に耳を傾けよう。

チラシ印刷用PDF

【シンポジウム】
太平洋まるごと博物館
~紀州と房州とカリフォルニア~

2026.2.11(水祝)13:30~16:00
千葉県南総文化ホール 小ホール
参加無料・13:00開場

<登壇者>
・大場俊雄(元千葉県水産試験場技師)
・櫻井敬人(和歌山県太地町歴史資料室学芸員)
・奥村一郎(和歌山県立近代美術館学芸員・教育普及課長)
・青木加苗(和歌山県立近代美術館主任学芸員)
・愛沢伸雄(NPO法人安房文化遺産フォーラム共同代表)
・鈴木政和(NPO法人安房文化遺産フォーラム副代表)
・山口正明(NPO法人安房文化遺産フォーラム理事)
<コーディネーター>
・池田恵美子(NPO法人安房文化遺産フォーラム共同代表)

<主催>  和歌山移民研究を軸とした国際交流事業実行委員会
<連携団体> 和歌山県立近代美術館・和歌山県太地町教育委員会
・NPO法人安房文化遺産フォーラム・全米日系人博物館
<後援>  南房総市・南房総市教育委員会・南房総市観光協会
・館山市・館山市教育委員会・館山市観光協会・房日新聞社
・日系アメリカ人市民同盟モントレー半島支部
<助成> 文化庁「令和7年度Innovate MUSEUM事業」

【展覧会】
舫う移民――紀州、房州、モントレーを結ぶ海の物語
① 2026.2.5(木)~15(日)10:00-16:00 月曜休館
・千葉県南総文化ホール ギャラリー
② 2026.2.21(土)~3.8(日)9:00-16:30
・太地町石垣記念館(休館 月火水・2/23除く)

 

1897年、小谷源之助・仲治郎兄弟をリーダーとする房総アワビ漁師らは、千葉県安房地域から米国モントレー地域へ渡りました。寒流のカリフォルニア海流でヘルメット型の器械式潜水を導入し、アワビ漁に成功しました。資産家A.M.アーレンとの共同事業で缶詰会社を興し、日本人排斥の機運が高まるなかでも特別に事業継続が認められていました。風光明媚なポイントロボスのコダニ・ゲストハウスには、尾崎行雄や竹久夢二などの政治家や文人墨客が滞在し、皇族らも立ち寄り、日米親善の架け橋となりました。源之助と姻戚にあたる小圃千浦(おばたちうら)や、和歌山出身のヘンリー杉本などアメリカで活躍した日系人画家たちとも親交を深めています。

戦争を経てこの歴史は忘れられていましたが、1994年、アメリカ社会に貢献した日本人として小谷源之助が顕彰 され、彼らが住んでいた土地はカリフォルニア州立自然保護区内で「コダニ・ビレッジ」と正式に命名されました。日米の国旗とUSAの文字が染められた「万祝(まいわい)」という漁師の晴れ着は、房州とモントレーの人々が育んだ友情の証として今も大切に残されています。

一方、和歌山県紀南地域からも多くの漁民が渡米し、ロサンゼルスを中心に活躍したことが知られています。

今回、日米の多様なミュージアムが協働し、移民史・ 水産史・美術史をテーマに調査や交流がおこなわれました。黒潮でつながる房総半島と紀伊半島、そして太平洋をはさんで向かい合うモントレー半島の人々が、海を越えてクロスオーバーし共生した姿が、生き生きと浮かび 上がってきました。現代の交流につながる壮大な物語を、展覧会とシンポジウムでお楽しみください。


 

1964年、カリフォルニア州水産局水産試験場技師の キース・コックスさんが来日し、川口(南房総市千倉町)の漁業協同組合に同年新設されたばかりのアワビ・サザエ・イセエビなどの養殖池を視察調査に訪れた。
このとき、コックスさんは「米国で初めてアワビを採取した潜水夫は千葉県南部の人で、米国の水産界に貢献したアワビ漁の先駆者だ」と話したという。これを聞いた関係者らが知人をたどり、小谷源之助・仲治郎兄弟の功績が地元で知られるようになった。
当時、千葉県水産試験場でアワビ種苗の技術開発に取り組んでいた大場俊雄さんは、たいへん興味を抱き、以来半世紀を超えて渡米アワビ漁師や潜水漁業の調査研究をライフワークとしてきた。
大場さんが上梓した著書は『房総の潜水器漁業史』(1993年)、『房総アワビ漁業の変遷と漁業法』(1995年)、『あわび文化と日本人』(2000年)、『早川雪洲- 房総が生んだ国際俳優』(2012年)、『房総から広がる 潜水器漁業史』(2015年)など多数にのぼる。
渡米した小谷兄弟は根本(南房総市白浜町)出身であるが、弟の仲治郎は9年間の滞米後に帰国して千田(南房総市千倉町)に暮らし、多くの潜水夫を養成してアメリカの兄源之助のもとへ送りだした。
千田に生まれ育った鈴木政和さんと山口正明さんは、大場さんの著書を読んだことをきっかけに、郷土の 先人たちに関する調査研究を追い続けた。
二人が所属するNPO法人安房文化遺産フォーラムは、地域の歴史文化遺産の調査・保存・活用をとおして教育支援やまちづくりを進めるエコミュージアム(館山まるごと博物館)活動に取り組んでいる。2018年に仲治郎の旧宅を解体する際、襖の裏張りから大量の古文書を発見し、台風被災とコロナ禍を乗り越えて、530枚の解読調査をおこなった。これにより、兄弟の渡米前の様子や事業、人脈などが明らかになってきた。
そして今年度は、「和歌山移民研究を軸とした国際交流事業実行委員会」の文化庁事業に参画し、広域エコミュージアムのネットワーク構築が広がっている。