【房日】250907_日米共同の移民史研究事業
渡米アワビ漁師の足跡たどる
日米共同の移民史研究事業
館山、南房総市で現地調査
文化庁の補助を受けた日米共同の移民史研究事業の一環で、明治期に安房の地から米国西海岸に渡ったアワビ漁師に関する現地調査が8月31日~9月3日に館山市、南房総市で行われた。館山市のNPO法人安房文化遺産フォーラムも事業に参画。関係者らがアワビ漁師のゆかりの地をめぐり、情報共有した。
移民が盛んだった和歌山県の県立近代美術館を中核に、太地町教育委員会、全米日系人博物館が参画する、「和歌山移民研究を軸とした国際交流事業」実行委員会の取り組み。
渡米した移民の調査は、2022年から続けられていたが、今年度はアワビ漁師にもスポットを当て、地元で調査研究している同NPOも委員に加わった。
同NPOによると、現在の南房総市出身の小谷源之助(1867~1930)と、弟の仲治郎(1872~1943)をリーダーとするアワビ漁師たちは、1897(明治30)年、アワビが豊富に取れることに着目した現地関係者の求めに応じ、米国カリフォルニア州モントレーに渡った。寒流の冷たい海での作業向けにヘルメット式の潜水具を持ち込むなどしてアワビを採取し、ステーキや缶詰などにして紹介。アワビを食べる習慣がなかった米国でのアワビの産業化に寄与した。
調査ツアーでは、南房総市白浜町根本の小谷兄弟の生家で、海産問屋だった金沢屋の屋敷跡地や、仲治郎が帰国後に暮らした同市千倉町千田など、南房総市、館山市内を巡った。また、源之助のひ孫で全米日系博物館職員のエバン・コダニさんも調査に参加しており、先祖の墓前で手を合わせた。
同NPO共同代表の愛沢伸雄さんは「困難の多かった時代に安房から日系移民として生き抜いた人たちがいたということは広く知られていない。この研究と交流が始まったことで、さらに地域の歴史を知るいいスタートとなった。次世代にも引き継いでいきたい」と話していた。
10月には、アワビ移民の拠点となったモントレーなどでも調査を行う。来年2月には、館山市内で報告会となるシンポジウムなども開催する予定。
(安井咲子)