【毎日】250905_明治期に米国に渡ったアワビ漁師の子孫 ルーツたどり南房総へ

明治期に米国に渡ったアワビ漁師の子孫 ルーツたどり南房総へ

(毎日新聞 千葉版 2025.9.5.)

明治期に南房総から米国に渡って活躍したアワビ漁師の子孫が来日し、千葉県南房総市に建つ先祖の墓などゆかりの地を巡った。

来日したのは、全米日系人博物館で映像編集を担当しているエバン・コダニさん(35)。エバンさんは、1897年に根本村(現南房総市白浜町根本)から米国カリフォルニア州モントレーに渡り、アワビ食文化を伝えた小谷源之助のひ孫にあたる。

小谷源之助は1867年、根本村で海産物商「金澤屋」を営んでいた清三郎、たよ夫婦の長男として生まれた。弟の仲治郎らとモントレーに渡ってヘルメット型の器械式潜水具を使ったアワビ漁を始め、缶詰会社を設立。アワビを食べる習慣がなかった米国の食卓にアワビのステーキを紹介するなどして成功した。事業の傍ら、モントレー日本人会の会長を務めたほか、日本の文化人らが交流するゲストハウスを建て、画家の竹久夢二やヘンリー杉本、政治家の尾崎行雄らが訪れた。

今回、エバンさんは和歌山県立近代美術館が中心となって進めている移民文化研究事業のメンバーとして日本を訪れた。1日には、同美術館の奥村一郎教育普及課長(53)、館山市に事務局を置くNPO法人安房文化遺産フォーラムの理事で仲治郎の研究を長年続ける山口正明さん(66)らとともに、金澤屋の跡地や源之助が建てた両親の墓、仲治郎の菩提(ぼだい)寺の長性寺などを回った。

現在は民家になっている旧金澤屋では、フォーラムの共同代表、池田恵美子さん(64)から仲治郎宅のふすまの下張りから見つかった手紙類を復元、解読したことなどを説明され、感慨深げに聴き入っていた。

2007年に源之助の4男のユージン・コダニさん、23年には孫のミア・コダニさんらがそれぞれ来日し、一族のルーツをたどっているが、エバンさんは「曽祖父に関しては渡米後のことしか知らなかった」という。日本でのゆかりの地巡りを終えて、「安房文化遺産フォーラムの人たちが、私の家族の歴史に関わる古文書などを残す努力をしてくれていることにとても感銘を受けた」と話した。【岩崎信道】