わたしが、まちに関心があること

わたしが、まちに関心があること

関和美(NPO法人安房文化遺産フォーラム)


I.わがまち館山とわたし

私の生まれ育った館山市は、千葉県の南部に位置している。海・田畑・低山など自然に囲まれ、温暖な気候の地域である。そのような土地のためか、都会からの移住者も多い。2010年8月1日現在の住民登録人口50,612人のうち、60歳以上が20,330人と高齢の方の多い地域でもある。

私は、高校卒業後、茨城県内の文系の短期大学に進学した。卒業年は1995年、ちょうど就職氷河期といわれた時代である。短期大学在学中に取得した図書館司書資格を生かせる仕事や、事務職を探したがなかなか見つからず、地元館山に戻ってきた。戻ってきたときの本音は“何もないけれども、仕方なく”である。

そして、職を転々とした後、現在の職場に巡り合った。現在の職業は、病院図書館員である。病院図書館員というのは、医師、看護師、薬剤師などコメディカルや事務職員など病院に勤務する全職員に対し、専門的な医学・医療情報を提供する図書室(館)に勤務する職員のことである。また、最近の病院には、患者さんや地域住民に対し、わかりやすい医学・医療情報を提供している、患者図書室(館)があるところもある。そして、私の勤務する病院にもあり、担当者として関わりを持っている。

病院図書館員になった当初は、何も知らずに飛び込んだ医療界、はじめて見聞きすることばかりで、覚えるのに必死であったが、仕事に慣れてくると「自分の時間」というものが欲しいと考えるようになってきた。

そんな時、職場の近くの鴨川市でウォーキングイベントがあることを知り、参加することにした。もともと郷土史に関心があったことと、歩くことが好きだったこともあり、以降、企業や観光協会主催のウォーキングイベントに参加するようになった。イベントでは、その土地の方々のガイドや、おもてなしサービスを受けた。一生懸命ガイドをしてくださる地元の方々の姿、イベントをおこなうためにウォーキングコースの整備をしてくださったとの話、文化財保護の重要性の話などを見聞きする中で、私もガイドをやってみたい、やるのなら地元館山でやってみたい、そういう思いが芽生えてきた。“何もないけれども、仕方なく”館山に帰ってきた私が、“館山でガイドをしてみたい”と思うとは、何とも不思議な話である。


Ⅱ.NPO法人安房文化遺産フォーラムとの出会い

“ガイドをしてみたい”そう思っても、具体的にどうすればよいのかわからずにいた。そんなある日、館山市内で開催されたウォーキングイベントに参加したところ、ガイドを担当していたNPO法人安房文化遺産フォーラムの方たちと知り合った。偶然にもNPOの代表は高校時代の恩師であり、「NPOの会員になって、一緒にガイドをやらないか」と誘われた。私は「念願のガイドができる!」と思い、早速入会した。

団体ツアー前の座学や、先輩方のガイドや体験談を聞くうちに、館山や安房地域は決して“何もない”ところではなく、歴史・史跡・食文化・自然など守らなければ・伝えていかなければならないことが、この足元にたくさんあることが徐々にではあるが見えてきた。

失敗したと感じることもまだまだ多いが、それでもガイドをすると喜んでくれ、さらには励ましてくれる人もいる。そのことで、多くの人々から新たな知識や元気を貰ってきた。まだまだ勉強中の身だが、より勉強し、今まで貰ってきた元気を来てくださった方や、ご指導いただいた先輩方に少しでも還元していけたらと考えている。


Ⅲ.「まちづくり」との出会い

2010年2月に館山市の富崎地区で開催された「元気なまちづくり市民講座-3つの“あ”のまちづくり」(国土交通省・平成21年度「新たな公」によるコミュティ創生支援モデル事業)に参加した。参加しますと意思表明はしたものの正直に言って、まちづくりというのは行政がやるもの(やってくれるもの)と思い込んでいた。そのため、何故講座名に“まちづくり”と掲げられているのか理解できなかった。参加して、全国生涯学習まちづくり協会の福留先生や斉藤先生の話、安房文化遺産フォーラムの先輩や富崎地区の方々の話は今まで知らないこと・気がつかなかったことばかりで、とても面白く、刺激を受けた。「元気なまちづくり」というのは、まちを元気にしようという意味のほかに、まちに住む人たちが心身ともにいきいきと、元気でいられるようなまちに、自分たちの力でしていこうということなのだと思えてきた。しかし、まだまだ若輩者の私に何ができるのだろうか、そんな不安な顔をしていたのが伝わったらしくNPOの先輩が「焦らなくていい」そう声をかけてくれた。その一言で、自分の中にあった何かが、吹っ切れた気がした。ガイドもそうであるが、先輩たちの真似をするのではなく、自分らしく、自分にできる範囲で参画をしていけばよいのだ、そう思え、気持ちが楽になった。地域アニメーターの資格も取得でき、仕事を少々強引に休み参加して、本当によかったと感じられる講座であった。


Ⅳ. わたしが、まちに関心があること「医療とまちづくり」

2009年12月に館山市が実施した市民意識調査によると、『今後のまちづくりで力を入れるべきと考える施策は何か』との問いに「医療の充実」との回答が、全体の47.5%で1位であった。また、年齢層があがるにつれて「高齢者の福祉施策」が上位を占めている(50歳代5位、60歳代3位、70歳代・80歳以上ともに1位)。この結果より、館山市民の多くが、医療分野に関心・不安を抱えていると読み取れるのではないだろうか。

そこで、人と医療分野の情報をつなぐ役割の病院図書館員・患者図書室担当者としての経験を生かして、私らしいまちづくりができるのではないだろうかと思うのである。

館山市では、二次医療を担っていた安房医師会病院が医師不足・看護師不足の影響もあり、経営難に陥った。2008年4月に社会福祉法人に経営委譲がされ、安房地域医療センターとして生まれ変わっている。今回は、委譲がされて病院がなくなるという最悪の事態は免れたが、またいつ陥るかわからない。今度は委譲先が見つからず、病院がなくなるかも知れない。病院の閉鎖は全国的に起きている事態である。医療を病院などの医療機関にすべてを任せる、という時代ではなくなってきているような気がする。

看護業界では「マグネットホスピタル」という言葉がある。マグネットのようにしっかり医師や看護師など病院に勤める人々を、病院につなぎとめておく必要があるのではないだろうか。そのためには待遇など病院側に任せなければならない部分もあるが、地域住民の協力も必要なのではないだろうか。特に不足しがちな医師や看護師は、他の土地から来ている人が多い。その人たちに長く勤務してもらう、欲をいうなら第二の故郷として館山に永住してもらうためには、館山が“何もない”ところではない“魅力ある土地”であることを知ってもらう必要があるのではないだろうか。そのためには、職員教育の一環として、地域を知るプログラムを導入してもらうのはどうだろうか。館山市民が講師になり農業体験・漁業体験をしたり、地元ガイド付き館山の魅力発見ツアーをしたりするのも面白いかも知れない。ガイドや講師役は、元気でなければできない。これが生きがいとなり、元気になる市民も増えていくのではないだろうか。また、医療関係者も、地域住民とのふれあいの中からこの地域ではどのような医療をすればよいのか肌で感じることができ、より患者に沿ったそその地域にあった医療ができるようになるのではないだろうか。

また医療関係者も地域に歩み寄るべきだと考える。『医療再生はこの病院・地域に学べ!』という本の中に、「休日を利用して病院の医療スタッフが各地域の公民館をまわり、イベント感覚で住民に予防医療の啓蒙活動を展開しているのだ」1)という千葉県東金市の事例が紹介されている。

館山市や安房地域では、啓蒙活動というと多くの人が集まることができるような大きなホールなどで行われることが多いように思う。それだと、高齢人口の多い館山市では、限られた人しか集まれないのではないだろうか。東金市のように「地域の公民館をまわる」ということなら、遠くのホールまでは行くのが困難な人でも、参加しやすくなるのではないだろうか。

また、ここで紹介されている東金市の事例では病院だけであるが、この「地域の公民館をまわる」に、病院以外の医療分野、福祉や介護の職員・行政職員なども参加すれば、より情報量が増えてよいのではないだろうかと考える。

また、小・中・高校でも行えば、医療関係者を身近に感じ、自分も医療分野の職種に就きたい、と思う子供たちも出てくるかもしれない。

そしてこのようなイベントでは、持ち帰ることのできる字が大きめなリーフレットを設置したり、医療関係書籍を展示したりするのもよいのではないだろうか。持ち帰り式のリーフレットは、自分自身が使うだけでなく、家族や、近所の人に渡すこともできる。より多くの方に、情報が届きやすくなるのではないかと考える。また、イベントで医療専門家からの講演会を行い、それをビデオに撮影して、図書館や公民館を通じて貸出しなどできたら、当日参加できなかった人にも、情報を得るチャンスが増えて、よいのではないだろうか。

医療業界に「チーム医療」という言葉がある。病院内の医師や看護師やコメディカル、事務職員など医療関係者が連携をとりあい、患者中心の医療を行うことである。これをもっと広い視野で、地域住民(市民)と、館山(安房地域)の医療・福祉・介護・行政が手をとりあい一つの「チーム」として地域の「医療」をつくっていくけたらよいのではないだろうか。これがこれからの「チーム医療」であり、「地域医療」の形であるといえるのではないだろうかと考える。

まちづくりコーディネーター養成講座を受講し、「まちづくり」について徐々にわかってきたという段階の私は、まだ具体的な案が出せず、将来の夢を語るところまでしか到達していない。市民もお任せではなく一緒に参加する「地域」まるごとチーム「医療」が夢物語でなく、実現できるようになるために、今後もより一層の努力を重ねて行きたいと考えている。


参考文献)

1)館山市

http://www2.city.tateyama.chiba.jp/?clrAllTpc=1

2)特定非営利活動法人(NPO法人)安房文化遺産フォーラム

http://bunka-isan.awa.jp/

3)安房医師会

http://www.awa-ishikai.jp/

4)伊関友伸. まちに病院を!岩波ブックレット 住民が地域医療をつくる.岩波書店.2010.


引用文献)

1)平井愛山他. 医療再生はこの病院・地域に学べ!.洋泉社.2009.