花禁止令とウミホタル採取
■ 花作り禁止令
戦争末期、本土決戦にそなえて7万人の軍隊が配備された房総半島南部では、花作りが禁止された。苗は引き抜かれ、サツマイモ畑や麦畑に変えられた。青年団による監視が敷かれ、花の球根や種子は焼却された。花農家は「非国民」といわれる時代、花を愛する農民たちは「花は心の食べ物」として、人里離れた山奥に種苗をそっと隠した。ささやか な抵抗であったが、そのおかげで戦後すぐに花作りが再開された。この実話をもとに田宮虎彦が小説『花』を著し、『花物語』として映画化(高橋恵子主演)されている。1991(平成3)年には、郷土の音楽物語『花とふるさと』がつくられ、千葉県内を中心に歌い継がれている。
■ ウミホタルの軍事利用
館山は世界的にも有名なウミホタルの生息地である。旧制安房中学校の勤労動員作業日誌には、生徒たちのウミホタル採集という記録がある。コスモブルーの美しい輝きを放つウミホタルは、発光源となる酵素の液体を放出する。軍は、体細胞中に発光物質を有するウミホタルを乾燥して粉末化し、それに水や唾液などをつけて再発光させる研究開発をしていた。それは夜間のゲリラ戦に備えて敵味方を判別する夜光塗料や、懐中電灯代用の携帯用照明にするため、さらには特攻機が夜間敵艦船に体当たりするための「ウミホタル照明弾」として研究開発をすすめていたといわれる。
2004(平成16)年5月、この実話をもとに、大門高子作詞、藤村記一郎作曲による合唱組曲『ウミホタル〜コスモブルーは平和の色』が誕生した。
【参考論文】