館山市教委は、明治画壇の鬼才と謳われた青木繁が滞在して代表作「海の幸」制作にかかわった家として知られる同市布良の小谷家住宅を市の有形文化財に指定した。16日、石井達郎教育長が小谷家を訪れ、所有者で小谷家当主の小谷栄さん(85)に指定書が交付された。
小谷家住宅は、明治22年の大火後に建てられたと考えられ、漁業で栄えた布良に残る明治中期の上層漁家として貴重な存在。桁行6間、梁間が約5間の寄棟造り桟瓦葺で床面積は約93平方㍍。分棟型民家の系統をひき、一部を大壁造りの防火造りとし、伝統的な間取りを脱して近代的間取りの傾向を示している点が特徴的。明治37年夏には、青木繁が画友や恋人の福田たねと写生旅行に訪れ、当時、網元だった小谷家に2か月ほど滞在。青木はこの間、布良の海を題材に多くの作品を描いているが、帰京後に完成させたのが国重要文化財にも指定されている海の幸で、同家は「海の幸誕生の家」として歴史的な価値もある。
こうした経緯から地元でも存続への声が高まり、「青木が滞在した当時のままの姿で、建物を後世に残していきたい」と小谷さんからの申請を受け、文化財審議会の答申を経て、市教委が文化財指定を決定した。
「みなさんと相談を重ねながら指定にこぎつけることができ、たいへん感謝している」と指定書の交付を受けた小谷さん。また、地元有志やNPO、芸術家などで構成する保存する会事務局長の愛沢伸雄さんは「地元や全国の方々の思いが文化財指定につながったと思います。会としても、小谷さんの思いを大切にしながら、地域の誇りとして次世代の子どもたちに夢と希望を与えるような保存と活用を考えていきたい」と話している。
※房日新聞2009.11.18付
房日新聞2009.11.10付
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米国でのアワビ漁伝える資料 鈴木さんがミニ博物館
南房総千倉 別宅改造し収集資料展示
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明治から昭和にかけて、アメリカのカリフォル二ア州モントレーに渡り、アワビ事業を開拓した南房総市千倉町のアワビ漁師たちを、写真や文章などで紹介した「まちかどミニ博物館」が、同市千倉町千田の民家にお目見えした。NPO法人安房文化遺産フォーラムの副代表を務める、同市千倉町千田在住の鈴木政和さんが、別宅の内部を改造してオープンさせた。今後、土日曜日と祭日に開き、一般の人たちに見てもらう。無料。
明治30年から昭和16年まで、器械式潜水漁の先駆者である小谷源之助・仲治郎兄弟ら南房総のアワビ漁師たちは、アメリカのモントレーに渡り、アワビ漁を始めた。
その多くは、千倉町千田地区の人たちで、アワビのステーキや缶詰などを紹介し、アメリカの食文化に影響を与えたという。
その後、日系人排斥運動が起きるが、潜水技術が評価されたアワビ漁師たちは、その後も渡米を許された。しかし日米開戦とともに、それまで続いたアワビ漁の歴史は幕を閉じることになった。
近年になり、こうした歴史が日米双方から明らかになり、親戚がアメリカでアワビ漁をしていたという鈴木さん自身も2003年ごろから独自に調査。房総の潜水器漁の歴史がつづられた本などを参考にし、地元で聞き取り調査をしたり、関連する当時の写真や資料を借りたりし、少しずつまとめた。
ミニ博物館は、千倉地区から白浜地区方面に向かい、市立七浦小学校入り口手前にある信号機近くの国道410号脇の民家。道路側の入り口脇に「まちかどミニ博物館」の看板のほか、「ちくらあわび塾」「安房地区9条連」の看板も並ぶ。
内部は、太平洋を渡った南房総のアワビ漁師たちを、表にしてそれぞれ紹介。またモントレーで撮影されたアワビ漁やアワビの加工工場、アワビ漁の様子などの写真も多数展示した。
また現地で小谷仲治郎たちが世話になった大地主、アレキサンダー・マクミラン・アレン氏の牧場風景や、千田地区の長生寺で行われたアレン氏の追悼供養の写真、アワビ漁に関連する書籍などが並ぶ。
このほかに、小谷仲治郎の世話によりアメリカに渡り、後にハリウッドスターとして活躍した早川雪洲が出演した映画「戦場にかける橋」などの映画が視聴できる、ミニシアターコーナーも設けた。
同文化フォーラムは、街そのものをミュージアムにしようという「まちかどミニ博物館」構想を検討しており、この一環として鈴木さんが中心になり同博物館を開館。今後、これまでに何度か試験的に実施した、アメリカに渡ったアワビ漁師たちの生家を巡る「アワビ街道めぐり」の本格稼動に向け、この見学地の1か所として、コース内に組み入れたいと考えている。
「アメリカに渡り、アワビ漁を紹介した人たちが、地元にいたことを、多くの人たちに知ってもらいたい。ここを訪れた人たちが興味を抱き、新たにアワビ漁師に関する情報や資料を提供していただければ幸いです」と鈴木さんは話している。土日と祭日の午前9時から午後5時までオープン。詳しくは鈴木さん(090—5812—3663)へ。
■12月発刊の「図説・安房の歴史」を監修した
天野努さん
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原始・古代から現代まで1万数千年の安房地域の歴史から100項目を選び、各項目一話の読み切り形式にまとめた一般市民向けの歴史書『図説・安房の歴史』(郷土出版社)が、12月中旬に発売されることになった。監修にあたった天野努さん(安房歴史文化研究会会長、元県立安房博物館長)に、出版の狙いや同書の特色について聞いた。
◎民家訪ね伝承を採話
児童文学者の松谷みよ子さんら
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民話を研究する全国組織の「民話の研究会」(松谷みよ子代表)が3日から1泊2日で、館山市に語り継がれう伝承などを聞き取る採話を目的に訪れた。松谷代表をはじめとする15人が参加。相浜や布良、稲地区に分かれ、地元の民家を訪ね話を聞いた。
松谷さんは、「貝になった子供」で児童文学者協会新人賞、「龍の子太郎」で講談社児童文学新人賞、国際アンデルセン賞優良賞など受賞している、日本を代表する児童文学作家の1人。信州や秋田、和歌山など各地で、地元の人から土地の伝説を聞き取るために自身で採話する。「土地でしか知られていないような、地元の人の話に魅力を感じる。10年くらい同じ地域に通って、作品になったものもある」と松谷さんは話す。
今回は、採話のほか、NPO法人安房文化遺産フォーラムの講座や南房総市白浜地域の「お勝節」実演などを見学、また2日目は、館山市里見八犬伝博物館や八犬士の墓地なども訪ねた。
採話では、松谷さんらは布良に住む船大工の豊崎栄吉さん宅を訪れた。地元の人を集め、日常使っている方言や祝いの席で歌う歌などを聞き取った。地元の話を語るために集まった8人の中には91歳になる女性もおり、結婚式や七五三など人が集まる祝いの席で歌われる「めでたいもの」や「あらたま」など口上を交えて歌ってみせた。研究会のメンバーは、さっそく録音したり、ノートに言葉を書き取って記録していた。
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*房日新聞2009.10.7付
館山市のNPO法人「安房文化遺産フォーラム」(愛沢伸雄代表)はこのほど、同市富崎地区の街並みを細密なパノラマイラストで描いた『あわがいどマップ②黒潮に生きる漁村 館山富崎』を発行した。
地元富崎の「青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会』(嶋田博信会長)が制作に協力。同フォーラムとしては「海軍のまち館山」に続くマップ第2弾で、「富崎地区の活性化、観光振興に役立てたい」としている。
マップはB2判で、布良、相浜から南房パラダイス、安房神社の区域までをカバー。両漁村や平砂浦沿いの「エコ・ウォーキング」コース、「まぐろはえ縄漁と仕掛けの様子」や「布良から見る伊豆諸島」なども分かりやすく図解で示した。
裏面は画家の青木繁、舟唄の「安房節」、名物料理・食材などの歴史・文化遺産を、写真を交えて紹介している。
手書きの細密イラストを担当した同市八幡の中屋勝義さん(67)は「地域を3か月ほど徹底的に歩き、完成までに1年かかった。地域のために、地図を大いに利用してほしい」と話した。
ガイドマップは5,000部を印刷。富崎地区の全世帯501戸に1部ずつ寄贈し、一般には1部300円で販売する。館山市内の書店で購入が可能という。
房日新聞 2009.9.29付
◎各界から160人が祝福
..安房文化遺産フォーラム、
..和島誠一賞など受賞祝賀会
館山市のNPO法人「安房文化遺産フォーラム 」(愛沢伸雄代表)の「和島誠一賞」受賞を記念する祝賀会が9月26日、同市のたてやま夕日海岸ホテルで開かれた。金丸謙一館山市長、石田三示衆議院議員をはじめ地元政界、経済界、NPO、文化財保護団体などから約160人が出席。全国的にも権威ある同賞受賞と、長年にわたり地元文化財の発掘、保存・活用に尽力してきた同フォーラムの功績をたたえた。
同フォーラムは、2006年に「あしたのまち・くらしづくり活動部門」で内閣官房長官賞、昨年には千葉県文化の日功労賞を受賞。今回で「トリプル受賞」となったことを機に、里見流家元の里見香華さんら43人が発起人となり祝賀会が企画された。
祝賀会では、千葉歴史学会会長の佐藤博信・千葉大教授が「里見氏の遺跡、戦争遺跡などが同フォーラムの民間の人たちによって守られた。これが高く評価された。この地に地下水のように流れている『民間力』を感じる」とあいさつ。金丸市長は「宮城の戦争遺跡、赤山の見学者は増えており、市でも駐車場を拡充した。ともに協働のまちづくりをしていきましょう」とエールを送った。
愛沢代表は「戦争遺跡。稲村城跡とも、当初は周囲の風当たりが強かった。だが、市民が主役になった文化財保存、地域づくりを忠実に目指してきたつもりだ。活動を続けるのは厳しい面もあるが、きょうを機に、また(心を)奮い立たせて頑張りたい」とスピーチした。