南房総・館山の新しい〝ピースツーリズム〟
「世界へ未来へ9条連ニュース・リレートーク」№142=2006.10.20収録
ユネスコの元平和文化局長D・アダムス氏は、「軍需産業に対抗し得る平和産業は〝ピースツーリズム〟である」と名言しています。私たちNPOはこの名にふさわしく、地域に残る戦争遺跡などの歴史文化を活用した平和・人権研修の講演やガイドを提供してきました。
明治を代表する画家青木繁が『海の幸』(国重文)を描いたのは、館山の布良という小さな漁村でした。昨冬、私たちは『海の幸』が描かれてから百年を記念して、ゆかりの地ウォーキングと講演、座談会を開きました。マグロ延縄漁発祥の地であり、神話のふるさとでもある小さな漁村を歩き、画家が受けた感動とエネルギーを感じ、あらためて地域への誇りが生まれました。これが契機となり、この漁村を訪ねる旅は「大人の休日」の企画商品となりました。私たちNPOと地元コミュニティの皆さんが、交流をしながらガイドすることになっています。戦争や平和を語るばかりではない、新しい〝ピースツーリズム〟の誕生といえるでしょう。
さて来春は、JR6社と千葉県が総力を挙げて取り組む「ちばデスティネーション・キャンペーン(DC)」が展開されます。私たちはこの好機をとらえ、従来の観光から〝ピースツーリズム〟への価値転換を図るべく、ふれあい・交流を重視した様々な企画を準備しているところです。たとえば館山駅前の商店街には、来訪者が電車の待ち時間を楽しめるような提案してきました。そんななかから、DC期間中のSL運行に合わせ、鉄道グッズを展示した〝まちかどミニ博物館〟が生まれました。また、中世の戦争遺跡ともいえる里見氏城跡や「里見八犬伝」にちなんだ里見ガイド養成講座を開き、「びゅー商品」を企画しています。
そして最大の目玉は、NPOの交流拠点としてオープンした「小高熹郎記念館〜たてやま海辺のまちかど博物館」です。大正期の銀行建物である洋館は、オーナーの小高氏が逝去後10年間閉じられたままでしたが、〝平和・交流・共生〟のメッセージを発信する拠点として再活用することとなり、NPOメンバーによる修復作業が少しずつすすめられ、再び新しい生命を吹き込まれました。ぜひお立ち寄りください。
〝ピースツーリズム〟という新しい観光概念を活かした、南房総の「ちばDC」での試みです。9条連の皆さまにも、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。