【房日寄稿②】250417_映画上映のお誘い

映画上映のお誘い
千葉市・高田宏臣

(房日新聞 2025.4.17.付)

4月27日午後1時半より、館山市コミュニティセンターで、映画「うんこと死体の復権」を上映できますことを、とてもうれしく思っています。開催実現のためにご協力くださいました皆さまに心より感謝申し上げます。


このおかしなタイトルの映画は、昨年の劇場公開以来、各方面に反響をおこし、絶えることなく全国で上映会が開かれています。監督は、『グレートジャーニー』で知られる探検家で医師の関野吉晴さん。自称「糞土師」で写真家の伊沢正名さん、生態学者の高槻成紀さん、絵本作家の舘野鴻さんらの活動を通して、生きものの排せつ物や死体を見つめ、無数の生きものたちが命をつなぐ循環の輪を描いたドキュメンタリー作品です。ひとが自然の一員であることを自覚し、そして全ての生きものに暖かいまなざしを向けて、豊かな心で大地に向き合い、生きてゆくために大切なことを思い起こさせてくれる映画です。

空気を吸い、水を飲み、命を食し、そして命を大地に還(かえ)してゆく、という循環の中で命をつなぐのが生きものであり、私たち人間もまた、ほかの生きものたちと変わりません。現代の暮らしの中で私たちが忘れがちな大切なものは、実はそこにあります。この映画は、私たち人間もあらゆる生きものの一員であることを、誰にでも楽しく思い起こさせてくれることでしょう。安房大神宮の森にも、山の上の方にかなり古い時代の土葬墓跡が見られます。中世以前の痕跡と思われますが、かつて人は、遺体を山の上にまで運び、そこで大地に還すことで山を育み、微生物や土中生物からつながる虫たち鳥たち、全ての生きものの循環を育んできたのです。山が豊かになれば、湧水を通して海もまた豊かなものとなります。先人たちはこうした営みの中で、故郷の山川海や全ての命とのつながりを、確かに感じとってきたことでしょう。遺骸(いがい)も排泄物も、現代社会の中では汚れたものと思われがちですが、実は、生きものとしてつながるリレーの大切なバトンなのです。この見方が変われば、私たちの周りの世界の生き物たち全ての存在がいとおしくなるのではないでしょうか。

上映会後のトークショーでは、映画に出演している伊沢正名さんと私が対談させていただきます。伊沢さんは、こうした命の循環の一員であるひととしてのあり方(野糞=のぐそ=)を40年以上にわたって実践し、伝え続けてこられた方です。さらに、自分の故郷の山に土葬墓を実現しようと模索していらっしゃいます。

私もまた、安房大神宮の森でも、かつてのように命を還してゆく、そんな場を実現したいと願い、整備を進めております。能忍寺の自然葬墓地では、まずペットの土葬から始めてみようかと、山口博永住職と相談しています。故郷の山に先祖が眠り、自分も子どももまた、故郷の命の懐に還ってゆく、そんな本来のあり方を見つめ直すことは、いま乾きつつある心のつながりを温め、潤してくれるのではないでしょうか。ここ館山・安房地域において、大人も子どももご年配の方も、みんながつながる温かな時間を共有できたら幸いです。

定員120人ですが、予約はお早めに電話で090・6479・3498(池田)、090・6157・6739(来島)へご連絡ください。

多くの皆さまとともに、命を考える機会を楽しみにしています。

(安房大神宮の森コモンプロジェクト代表)

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房日寄稿① 2025.4.8..「安房大神宮の森コモンプロジェクトへの想い」