【房日寄稿】240517_教育とは~母親大会からの学び(本明明香)

「教育とは?~母親大会からの学び~」
.. 本明明香(母親大会実行委員/南房総)

(房日 2024.5.17付)

昨年12月に開催された第29回安房地域母親大会では、映画『夢みる小学校』上映会と、世田谷区立桜丘中学校の西郷孝彦前校長のトークセッションを行いました。映画には未来の教育のヒントがたくさんあり、西郷先生のお話では、子どもの気持ちに寄り添う改革に感動しました。桜丘中学校では、合理的配慮の結果、校則、定期テスト、宿題廃止となりました。

昨年度、わが子の不登校を通じてさまざまなご縁があり、学校教育について多角的に考える機会となりました。学校の意義とは何でしょう。教育すべきことは何でしょうか。

勉強はユーチューブでもできます。勉強やスポーツで優劣をつけ評価することは正解でしょうか。スマホやSNSなど、子どもの日常でトラブルあるものは家庭任せ。トップダウン式の校則順守。善悪の心、皆で一つのゴールに向かう心を良しとする教育。その良さもあるでしょうが、子どもたちは果たしてそれを心から望んでいるのでしょうか。上からの押し付けになっていないでしょうか。

親目線から、公立教育に取り入れてほしい視点を3つにまとめました。

一つ目は、国際法である「子どもの権利条約」です。全ての子どもには、自由に意見し、活動できる権利があります。子どもにとって一番いいことを一緒に考え、一人ひとりと丁寧に向き合うことが求められています。

二つ目は、障害のとらえ方です。現状では、個人の中に障害があるとし、社会に適応するために個人が障害を治療・改善することが求められます。不登校支援教室でも、そのような対処の仕方をされていると感じました。でも、個人と社会環境との相互作用の中にこそ障害はあります。これからは社会の側が、障害のある人がいることを前提として環境を変えていくことが大切です。そうすれば、全ての子どもにとって過ごしやすい学校環境となると思います。

三つ目は、反権威主義教育です。世界的に有名な教育者A・S・ニイル氏が100年前、サマーヒル・スクール創設において提唱しました。「学校が大きらい」な子どもにとって、生徒と教師を隔てる壁こそが問題だと言及しています。大人がつくる世代間の断絶は、一生続く劣等者意識や、力を持つ人に服従する恐怖を与え、人間に秘められた可能性を破壊し、犯罪やノイローゼを生み出す一端となり、抑圧的な社会体制へつながると言及しています。先生と親しく本音で付き合える学校こそ、必要だと思います。

『夢みる小学校』を観て、教育で大切なことは「対話×プロジェクト×幸せ」だと考えました。対等な対話。チームで達成するプロジェクト学習。成功体験で自己肯定感を育み、基礎学力も培います。問題解決力や自分の適正も見えてきます。また、幸せに満たされることで、周りへの優しい心が自然と育まれます。

子どもの意見を尊重して、我が子に宿題をやらせたくないという保護者の声もよく聞きます。その場合には、教育基本法第十条をもとに学校と話し合いをしてみてはいかがでしょうか。法律は「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」と言及されています。家庭での時間は、子どもの人間力を育むために、保護者に責任があるからです。

教育の主権者は、子どもと保護者です。「いい顔してちゃダメ」という西郷先生の言葉に背中を押され、自分の意見を伝える大切さを実感しています。子どもには意見を表す自由があります。

親として、どんな教育をしてほしいのか、子どもの意見も聞きながら、学校の先生と一緒に変えていくときだと思います。私は、学びを深め価値観を広げたいと思い、友人と一緒に教育について対話する企画を始めました。一人ひとりの個性を伸ばして生きる力を育む教育であってほしいと願っています。

(安房地域母親大会実行委員)