【東京新聞】230325*寺崎武男生誕140年展きょうから

館山ゆかりの「幻の画家」に焦点
近代絵画先駆け 安房高で講師も

(東京新聞2023.3.25付) ⇒ 詳細はコチラ。

 

千葉県館山市ゆかりの画家・寺崎武男(一八八三〜一九六七年)の生誕百四十年を記念して作品資料展「房州とイタリアを愛した画家 寺崎武男・生誕140年」が二十五日、県南総文化ホール(同市北条)で始まる。「国際的に活躍したにもかかわらず、あまり知られていない“幻の画家”。あらためて顕彰し、地域の誇りとして次世代へ継承したい」とNPO法人安房文化遺産フォーラムが主催する。四月五日まで。(山本哲正)

寺崎武男(安房文化遺産フォーラム提供)

 フォーラムによると、寺崎は東京・赤坂出身で、東京美術学校西洋画科を卒業。一九〇七年にイタリアへ渡り、フレスコやエッチング、壁画など欧州美術の諸技法を研究し、日本に紹介した近代絵画の先駆者となった。
 観音を描いたテンペラ作品「幻想」は、ヴェニス・ビエンナーレ国際展で日本人初の入賞を果たし、イタリア政府の買い上げに。東西文化の融合を目指し、その功績から芸術名誉賞はじめ同国国王や政府から勲章などを多数授与された。
 留学中に「天正遣欧使節」の行跡に出合い感銘を受け、時代に翻弄(ほんろう)された少年たちの姿を後世に伝えようと、生涯にわたるテーマとした。一九年には日本創作版画協会を設立。エッチング作品が英国人陶芸家バーナード・リーチに激賞されている。
 やがて館山市で暮らし始め、戦後の四九年には安房高校の美術講師となり、後進の育成に努めた。
 フォーラムでは遺族から、作品約二百点のほか約二千枚にのぼる書簡や数十冊の手帳などの寄贈を受け、調査分析を進めてきた。
 今回の展示で注目の作品は、終戦の翌年四六年に描いた大きなびょうぶ画「平和来たる春の女神」で、舞台は同市布良(めら)の女神山(めがみやま)と阿由戸(あゆど)の浜と推察されるという。山には横たわったり、しゃがみこんだりした人々が見られ、戦争で亡くなった人たちを描いたとみられる。

「平和来たる春の女神」。手前に描かれた人々は、戦争で亡くなった人たちを描いたものとみられるという

 もう一つは二六年の第一回聖徳太子奉賛美術展覧会に出品されたフレスコ壁画「ヴェニスの女」。書簡でたどったエピソードもパネルにした。フォーラムは「ほかにもベネチアの風景画や宗教画なども多く、見応えがある。寺崎の世界を広く紹介するので、先人の姿を再発見してほしい」と来場を呼びかけている。
 会場は月曜休館。四月一日午後二〜四時、シンポジウムを開き、大阪芸術大の石井元章教授が「日伊交流史における寺崎武男」と題して基調講演。フォーラム共同代表の愛沢伸雄さんによる調査報告「手帳と書簡から見える寺崎武男の世界」もある。入場無料、資料代五百円。