【房日展望台】170503*クラウドファンディング(小高記念館)
クラウドファンディング
小高記念館
(房日新聞2017.5.3付)‥⇒印刷用PDF
NPO安房文化遺産フォーラムの事務局だった館山市館山の小高記念館が、クラウド・ファンディングによって、古民家風のカフェに生まれ変わった。その名も「TRAYCLE(トレイクル)Market&Coffee」。
昨年12月にオープン、今年3月から10人限定の「TRAYCLE Cinema」も始めた。
クラウド・ファンディングとは、聞きなれない言葉である。不特定多数の人がインターネット経由で、他の人々や組織に財源の提供や協力などを行う事。「群衆」と「資金調達」を組み合わせた造語である。
カフェのオーナー、知識淳悟さん(40)は鹿児島県出身。一昨年まで、話題の豊洲に住み、10年以上、都心のIT企業に勤めた。パソコンとにらめっこする毎日だった。店を切り盛りする妻の絵理子さん(40)とは職場結婚である。その後、船橋に移り、地下鉄東西線の満員電車も経験した。
絵理子さんの祖父が、館山名誉市民である故・小高熹郎さんだ。大正初期に建てられた古川銀行鴨川支店を昭和初期に現在地に移築した。館山市の文化交流の拠点、小高資料館となるが、1997年、所有者の熹郎さんが亡くなって閉館した。その後、2008年からNPO安房文化遺産フォーラムの事務局となり、2015年11月、国の有形文化財に登録された。
ここから館山港まで100メートルもない。港を望む海辺の街中にポツンと1軒だけ残された、古い港町の風情を感じさせる白い洋館。週末の午後7時からは映画の上映会。興味深いテーマのドキュメンタリー映画が1500円(コーヒーか紅茶、クッキー付き)で楽しめる。予約が必要という。
薄暗がりの中に浮かび上がる店舗は、港町の風情を感じさせてくれる。先の大戦が終わって間もない1945年9月、アメリカの占領軍が初めて館山に上陸した事実は、意外と知られていない。この洋館にたたずむと、敗戦から日本の再生を歩み始めた館山の歴史を垣間見ることができる。
電話は、0470-49-4688。営業時間は、午前11時から午後6時まで。月曜日、火曜日が定休日。安房文化遺産フォーラムの愛沢伸雄理事長は「こうした形で館山の文化遺産が守られ、市民に継承されていくのがうれしい」と話している。