【千葉日報】151121*港町彩る洋風外観 地域文化発信拠点に 登録有形文化財 小高記念館
港町彩る洋風外観 地域文化発信拠点に
登録有形文化財 小高記念館 館山
国の文化審議会の答申で20日、館山市館山の小高記念館が登録有形文化財(建造物)に登録された。館山湾にほど近い木造2階建ての旧銀行建築。上下窓を並べる洋風外観が港町の風情を彩り、国土の歴史的景観に寄与していると評価された。現在はNPO法人が地域文化発信拠点として活用しており、関係者は「さらなる地域文化振興を進めていきたい」と力を込める。
小高記念館は、大正初期に建てられた古川銀行(現在は千葉銀行に合併)鴨川支店を、後に鳩山一郎内閣の文部政務次官を務めた小高熹郎氏が昭和初期に現在地へ移築。1階は元営業室の洋風内装で、2階は周り廊下に和室2間が並ぶ。1階には、大正期の銀行金庫や欧州絵画も残る。
建物は移築を進めた小高氏が水産事務所として活用。戦前に県議となったことを期に政治事務所となり、戦後の衆議院議員としての活躍も支えた。
政界引退後は、小高氏がサトウハチローや白鳥省吾らと親交が深く詩人として活躍したことから、文化交流拠点となる。城山公園に記念碑が建立されている『里見節』や、『鏡ケ浦』『館山音頭』など、数々の名作が生まれた。
小高氏が1997年に亡くなり一時閉館。時を経て2006年、地域の文化財産を保存し街づくりを進めるNPO法人安房文化遺産フォーラムが事務局として使うことになった。その際、潮風で剥がれた外装塗装を白く塗り直し、歴史的建造物を再生させた。
同団体は戦国大名里見氏の城跡や館山海軍航空隊赤山地下壕(ごう)といった歴史・文化遺産の保存や活用を展開。そうした活動を通じて進める地域資源を生かした街づくりの拠点となっている。
記念館は現在、潮風で再び剥がれてきた外壁塗装を塗り直している。記念館の一般公開は特定の曜日などではなく、同団体のスタディツアーの一環として行う。愛沢伸雄代表(64)は「館山市の文化振興のシンボルとして国の登録文化財となったことはとても光栄。一つ一つの文化遺産が点から線、面となり、館山がまるごと博物館になることが進む契機となれば」と語る。
小高氏の息子で祈念館を所有する小高英夫さん(73)は「父親から引き継いだ建物が登録され喜ばしい。本当によかった」と笑顔を見せた。
屏風ケ浦 、名勝に(銚子)
文化財審議会は20日、約10キロにわたり海食崖が続く屏風ケ浦(銚子市)など2件を名勝に、戦時中に首相を務めた近衛文麿が住み、日米開戦前の重要な舞台になった「荻外荘(てきがいそう)」(東京都)など9件を史跡に、伊平屋島の念頭平松(ねんとうひらまつ)(沖縄県)など5件を天然記念物に指定するよう馳浩文部科学相に答申した。屏風ケ浦は天然記念物にも指定されている。
近く答申通り告示され、史跡は1759件、名勝は398件、天然記念物は1021件になる。
このほか富士山などを望む景勝地で信仰の地としても親しまれた十国峠(日金山(ひがねさん)、静岡県)など3件を登録記念物にすることも答申した。登録記念物は98件になる。
また、登録有形文化財(建造物)には、小高記念館(館山市)など全国で124件が新たに登録され系1万492件となる。