【房日寄稿】151008*『疎開した40万冊の図書』上映(池田恵美子)
【房日寄稿】 第21回安房地域母親大会へのお誘い
映画『疎開した40万冊の図書』上映会
安房地域母親大会実行委員会副委員長 池田恵美子
(房日新聞:寄稿2015.10.8付)
戦後70年の今年、第21回安房地域母親大会は、映画『疎開した40万冊の図書』を上映する。本作は、「百年後の人々に届けたい作品」として、3年をかけ金高謙二監督により制作された。
学童疎開が行われていた同時期に、都立日比谷図書館で蔵書の疎開が行われていたことはあまり知られていない。図書館員や都立第一中学の生徒たちが、リュックを背負い、大八車を押して、50キロも離れた奥多摩や埼玉まで何度も本を運び、移動は1年に及んだという。映画では、実際に携わった人や、疎開先で自宅の土蔵を提供した人びとなどの証言によって、過酷なプロジェクトの史実が明らかにされていく。
この疎開により、国指定重要文化財『江戸城造営関係資料』をはじめ、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』自筆稿本など、貴重な書籍40万冊が戦禍をくぐり抜け、後世に残された。昭和20年5月25日、焼夷弾により日比谷図書館は全焼し、21万冊の図書は消失している。命がけで本を守った人びとのおかげで、日本の文化は遺産として守られたのである。
「戦争は人々に直接的なダメージを与えるだけでなく、民族の尊厳や文化を破壊することに他ならない。彼らが守りたかったのは、本という文化に宿った多くの人々の命ではないだろうか」と、金?監督は語る。
映画の後半では、東日本大震災で被災した図書館の復興について紹介されている。陸前高田市立図書館では、津波で8万冊の図書を流失したが、400冊の貴重書を取り出して修復し、仮設図書館や移動図書館車を進めながら再建を目ざしている。被災後は生活の立て直しが最優先だが、その次には、心を癒す文化がなければ人は生きられない、ということを痛切に感じる。
戦後70年という節目を迎え、平和の文化を未来の子どもたちに手渡すことを願い、映画上映とともに監督の講演が実現した。奇しくも、金?監督は館山海員学校(現館山海上技術学校)の卒業生である。しかも同校は、洲ノ埼海軍航空隊跡地の一角にあり、カッター艇庫は海軍水上班基地跡でアメリカ占領軍の上陸地という戦争遺跡である。不思議な縁である。
10月10日と11日、午後1時半より、会場は館山市コミュニティセンター第一集会室。上映協力券500円は、宮沢書店本店と鴨川書店で前売りし、当日参加も受け付ける。
両日とも安房での戦争パネル展、10日10時半より「おやこピースカフェ」、11日10時半より「禁止唱歌」や「禁演落語」などのワークショップを参加費無料で同時開催する。母親大会は、老若男女を問わず、誰でも参加できる。多くの方のご来訪をお待ちしている。
問合せは、080-5516-9926石井麻美子、090-5762-5956関恵美子。