【毎日】150906*戦後70年、館山で戦争遺跡シンポ
戦後70年:館山で戦争遺跡シンポ
若者の参加へ知恵出し合う 市民団体や研究者ら
第19回戦争遺跡保存全国シンポジウム館山大会(戦争遺跡保存全国ネットワーク主催、NPO安房文化遺産フォーラム共催、館山市、市観光協会など後援)が5日、館山市の県南総文化ホールを主会場に3日間の大会の幕を開けた。戦争体験者が少なくなる中、全国の遺跡保存にかかわる市民団体や研究者が若い世代に保存運動をどうつなげるか知恵を出し合う機会となった。
館山大会実行委員会の委員長でもある地元の語り部「さくら貝」代表の松苗禮子さん(79)が88年前、米国から安房地区に贈られた「青い目の人形」たちがたどった運命を「語り」の形で紹介して開幕。金丸謙一館山市長の歓迎の言葉に続き、在日2世で韓国・光州市立美術館名誉館長の河正雄(ハジョンウン)氏が「二つの祖国を生きる」と題して記念講演した。
主催者の全国ネット共同代表、十菱駿武・山梨学院大名誉教授は戦後70年を迎えた戦跡保存について基調報告。この1年で文化財などへの登録が29件増えたものの、東京都武蔵野市の中島飛行機武蔵製作所の倉庫が、保存運動にもかかわらず7月に取り壊されるなど、貴重な遺跡を失った事例も報告された。
この日のメインは沖縄と高知県で保存活動を続ける人たちによるパネルディスカッション。沖縄県南風原(はえばる)町で旧沖縄陸軍病院南風原壕(ごう)の保存活動に取り組む沖縄国際大の吉浜忍教授、高知県香南市で近隣市と連携して戦争遺跡の保存活動をしている同市の松村信博主監調査員、館山市商工観光課の池田英真主任学芸員がそれぞれの取り組みを披露した。
南風原町では町史の編集に20代、30代の若者を過半数加えた実績を報告。いずれも戦争体験者が減り、若い人たちに活動に参加してもらうための工夫をしている様子が伝わった。
6日は3分科会で研究テーマを報告する。特別分科会では地元の安房文化遺産フォーラム(愛沢伸雄代表)が米テキサス軍事博物館から取り寄せた終戦直後の米陸軍の館山上陸の模様を撮影した映像を再現。当時の館山を知る体験者らに出席を願い、立体的に当時の模様を再現する。
【中島章隆】