【新婦人】120531*初夏の南房総へ平和と歴史を考える

初夏の南房総へ〜平和と歴史を考える

「慰安婦」鎮魂の碑が語るもの

(新婦人しんぶん2012.5.31付)


5月19日、平塚らいてうの会が「らいてう忌2012」として企画した「南房総 館山日帰りの旅-らいてうゆかりの地を訪ね、平和と歴史を考える-」バスツアーに同行しました。

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らいてうと房総

参加者28人を乗せたバスが、東京湾アクアラインを通過し、千葉県に入りました。らいてうの会副会長の折井美耶子さんから「らいてうと房総についてのお話がありました。

「戦前の房総は、湘南よりも東京の人たちに親しまれていた地域。らいてうも1914年の『青鞜』3周年気年号発行のあと奥村博と御宿海岸へ、1921年には新婦人協会(※1)の活動で体調を崩し2人の子どもと竹岡海岸に静養に訪れていました」

館山の北条海岸はらいてうの父定二郎が老後に移り住んだ地でもあります。

(※1)婦人の社会的・政治的権利獲得を目指し、1919年に結成された婦人団体。

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沖縄戦の次は館山だった

館山市の歴史を学ぶ学習会の講師はNPO法人安房文化遺産フォーラム事務局長の池田恵美子さん。

「1945年、沖縄の南部戦線には10万人の兵士が送り込まれ、さらに、太平洋に突き出した房総半島は沖縄戦後、真っ先に狙われると、安房には本土決戦に備えた7万人の兵士が配備されました」

兵士の食糧確保のため、花畑をつぶして、麦やイモ畑に換えろという「花作り禁止令」が出され、花の球根や種子は焼却されたといいます。

館山湾は世界でも有数のウミホタルの生息地ですが、この“ウミホタル”も軍事利用されていました。ウミホタルを乾燥させて、夜間に敵味方を判別するときや、懐中電灯の代用品として使われていた、と。また、終戦直後の1945年9月3日、アメリカ占領軍本体約3500人が館山に上陸。本土で唯一「直接軍政」が敷かれ、4日間ではあっても、館山を占領支配したことは、ほとんど知られていません。

学習会のあと、一行は海上自衛隊館山基地のすぐ近くにある「赤山(あかやま)地下壕(ごう)」に向かいました。壕といっても、中は広く、迷路のように入り組んでいて、たくさんの部屋にわかれていました。「地下壕というよりも、実戦のための地下要塞です」と、安房文化遺産フォーラム代表の愛沢伸雄さん。

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巨大な地下要塞

地下壕建設に関わる資料がほとんど不明のなかで、数少ない証言から、館山海軍航空隊の極秘の航空機開発や、実験施設、野戦病院のような医療施設があったのではと推定されています。

“御真影”(※2)がおかれていた奉安殿や、出入り口付近の大きな部屋は、壁がコンクリートで塗られていましたが、ほとんどは素堀りで、ツルハシの跡がくっきりと残っていました。

赤山壕からほど近い住宅街には「掩体壕(えんたいごう)」と呼ばれる、敵機から戦闘機を隠すための格納庫があり、館山市内だけでも48の戦跡があります。

(※2)天皇・皇后の公式肖像写真

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女性たちが共同で暮らす

戦時下の抵抗拠点の一つとしてつくられた洲ノ埼海軍航空隊「戦闘指揮所」「作戦室」壕は、婦人保護施設「かにた婦人の村」の敷地内にあります。

「かにた婦人の村」は、「社会から見捨てられた女性たちが一生安心して暮らせる婦人保護施設を」とキリスト教の深津文雄牧師が軍の払い下げ地に1965年に設立。特に障害の重い女性が入所する売春防止法(1956年)に基づく「長期婦人保護施設」です。

傷ついた女性たちが、家族として暮らす「かにた婦人の村」にはいまでも80人ほどの女性が暮らしています。

スイカズラの甘い香りが漂う敷地内には、寮のほかに、畑や、牛乳やパンをつくる部屋、協会があり、その一番高い場所に「噫(ああ) 従軍慰安婦」の碑があります。この碑は、村で暮らしていた城田すず子さん(仮名)の「慰安婦」体験の告白を受けて85年前に建てられたもの。

「軍隊がいるところには慰安所がありました。看護婦とみまがう特殊看護婦になると将校相手の慰安婦になるのです。兵卒用の慰安婦は1回の関係で50銭、また1円の切符を持って列をつくっています。・・・なんど兵隊の首をきってしまいたいと思ったかしれません。半狂乱でした。・・・どうか鎮魂の塔を建ててください」(深津牧師への手紙。「戦争遺跡」より)

最初は一本のヒノキの柱でしたが、2度とこういうことが起きないようにと、翌年には石碑が立てられました。

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1日かけて館山の戦争の歴史を学び、東京から近い千葉県の館山に、こんなにもたくさんの戦跡があること、「直接軍政」の場になったことを知り驚きました。「慰安婦」鎮魂の碑からは真の解決へ、歴史の真実をひとりでも多くの人に知ってほしいと感じました。

 

※「かにた婦人の村」「噫 従軍慰安婦」の碑は、NPO法人安房文化遺産フォーラムのスタディツアー参加者のみ見学が許可されている。

問い合わせ TEL 0470-22-8271 HP: http://bunka-isan.awa.jp/