【房日】120420*稲村城跡の国史跡指定記念の冊子第5集刊行

稲村城跡の国史跡指定を記念

保存会が冊子第5集刊行 館山

17年の活動記録や特別寄稿も収録

(房日新聞2012.4.20付)

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里見氏城跡として先ごろ、国史跡に指定された館山市の稲村城跡の保存運動に取り組んでいる「里見氏稲村城跡を保存する会」(愛沢伸雄代表)は、指定を記念した冊子第5集となる「里見氏稲村城跡をみつめて」を発行した。世話人をはじめとした役員の喜びの声や足かけ17年にわたる活動、さらに里見氏研究に携わってきた学者らの特別寄稿などからA4版152ページに収録。市内の宮沢、松田屋書店で1500円で販売している。

「貴重な史跡である稲村城跡が工業団地への進入路建設で破壊されようとしている。何とか守りたい」。1996年、安房地区高校社会科教育研究会で歴史研究者たちの訴えから同会は産声をあげた。当時、高校の社会科教諭だった愛沢代表が立ち上がり、同志を集めて地道な活動が始まった。

有志を募っての主郭部周辺のたけの伐採や草刈り、フィールドワーク、講演会などが続けられ、しだいに市民の関心も高まっていった。

着工寸前にあった進入路建設は、市議会への反対請願が採択され、ルートは城跡を回避するように変更された。その後も史跡をめぐるウオーキングなど地域づくり視点から活動を展開。会の目的も安房地域全体を視野に入れながら、稲村城跡だけでなく点在する城跡を里見氏城跡群として、国史跡指定を目指す方向へと発展的に軌道修正。2000年からスタートした「里見フォーラム」の開催を契機に指定へ向けた機運も徐々に盛り上がり、昨年11月の国の文化審議会答申に至った。

第5集では、役員らがこうした地道な取り組みを述懐。活動の記録も記載し、14日の記念シンポジウムにも出席した峰岸純夫教授、滝川恒昭・千葉城郭研究会ら研究家が、それぞれの視点から前期里見氏の考察など特別寄稿。愛沢代表は、あとがきの中で「はじめは『文化では飯が食えない』『国史跡など夢物語である』と揶揄された」とふり返りながら、「(指定は)今後の地域史研究や歴史・文化を活かす地域づくりに大きな貢献を果たすものになっていくと確信している」と結んでいる。