【房日】090813=戦没画学生の遺作、新たに無言館へ
戦没画学生の遺作、新たに無言館へ
館山での講演会きっかけ
千葉の北条さんが「提供したい」
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7月10日に館山市の県南総文化ホールであった窪島誠一郎氏=長野県上田市の美術館「無言館」館主=の講演会がきっかけとなり、新たな戦没画学生の遺作が千葉市に残されていることがこのほど明らかになった。遺作は今月5日、窪島館長に預けられ、補修を行った上で近く無言館に展示されることになった。
関係者によると、遺作の存在を明らかにしたのは千葉市中央区の北条文子さん。講演会の開催を報じた新聞を読み「亡夫のいとこ、故・安田昇の遺作があるが、無言館に飾っていただけるのなら提供したい」との申し出があった。
遺作は、谷川岳の一の倉沢を描いた油絵と、木の彫刻の2点。同講演会実行委委員会の溝口七生さん=鋸南町在住=、橋本芳久さん=館山市在住=が窪島氏とともに北条さん宅を訪問、作品と対面した。
安田昇さんは大正8年、名古屋市生まれ。東京美術学校(現・東京芸術大)彫刻科を卒業後に名古屋第2師団に入隊、昭和20年3月にマリアナ諸島で玉砕した。26歳だった。終戦後に戻ってきた白木の箱には小さな紙片のみしか入っておらず、家族は本人の愛用していた彫刻刀を入れて葬ったという。
学生時代、安田さんはいとこの北条さん宅に下宿。このため遺作もこの家に残り、これまで大事に保管されていた。
遺作の取り扱いについて折衝に当たった橋本さんは「北条さんは『仲間の画学生の作品が集まっている場所に預かっていただき、安田も、そして遺作も喜んでいるのでは』と話していた。今回の講演会の取り組みが新たな作品の発掘につながり、こんなうれしいことはない」と語った。
【写真説明】故・安田昇さんの遺作と対面する無言館の窪島館主=千葉市
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