【房日】250510_市部瀬の惨劇から80年

市部瀬の惨劇から80年
献花式で40人が鎮魂の祈り
平和願いコンサートも 鋸南

(房日新聞 2025.5.10.付)

終戦間際、鋸南町下佐久間で米軍機が列車を機銃掃射し、13人が死亡、46人が負傷した「市部瀬の惨劇」。犠牲者を慰霊し、歴史を後世に伝えようと、「明日の鋸南町を考える会」が8日、現場に建てられた恒久平和祈念の碑で、恒例の献花式を行い、参列した約40人が花と鎮魂の祈りをささげた。終戦80年の節目である今年は、道の駅「保田小学校」も協力し、同所でプロピアニストによる無料コンサートもあり、聴衆約40人が美しい調べに聴き入り、平和への思いを深めた。

1945年5月8日午前11時50分ごろ、安房勝山駅を発車した下り列車に対し、3機の米軍機が北の空から飛来し、先頭の機関車を銃撃、立ち往生した列車に、2機目の米軍機が機銃掃射を浴びせた。

同会では、地元の戦争被害の歴史を伝えていこうと、2011年に同祈念碑を建立した。会の立ち上げメンバーで、祈念碑の題字を書いた高島超子さんは17年に亡くなり、めいでピアニストの広瀬美紀子さんが叔母の意志をつないでいこうと、活動に協力。町内の道の駅保田小の駅長である三瓶聖史さんも協力を申し出て、今年は戦後80年の節目でもあることから、無料のピアノコンサートを行うこととなった。

献花式は10年から行っており、今年で16回目になる。式には、犠牲者の親族などの関係者や、地域の人たちも出席。事件があった11時50分に合わせて黙とうし、犠牲者の苦しみに思いをはせた。

銃撃で亡くなった機関士の親族で、茂原市から毎年参列している門秀行さんは、今年も花をささげた。「こうして、平和を祈って活動していることが大事だと思う。会の皆さまに敬意と感謝を伝えたい」と話していた。

式の後は、保田小音楽室で「平和への希望を込めて」と題したコンサートを開催。東京・八王子の八王子音楽院の院長でもある広瀬さんが、平和をテーマに選曲したクラシックの名曲の数々を、曲が作られた時代背景や、作曲家の思いなどの解説を交えて演奏。一流のプロピアニストの奏でる、ときに壮大、ときに優雅な調べに、観客はうっとりと聴き入っていた。誰もが知っている昭和歌謡のアレンジ演奏では、主旋律に合わせて歌を口ずさむ人もいた。

演奏を終え、広瀬さんは「叔母の思いを次世代につないでいくお手伝いが少しでもできたならうれしい。今後も鋸南の皆さんとのご縁を大切にしていきたい」と話していた。

(前木深音)