【沖縄タイムス】240717 南風原病院壕 活用探る

南風原病院壕 活用探る
地域と関わり議論
現地入り平和学習に効果

(沖縄タイムス2024.7.17付)

南風原町の沖縄陸軍病院南風原壕のこれからと、戦争遺跡の活用の可能性を考える「壕シンポジウム」(主催・町、自治総合センター)が14日、町内で開かれた。病院壕の保存・活用に至る歩みを振り返った他、別の地域で取り組まれている事例の報告があった。

(社会部·當銘悠)

町は1990年に沖縄陸軍病院南風原壕群を町の文化財に指定。第二次世界大戦の戦争遺跡の文化財指定は全国で初めてだった。指定後は保存・活用・整備に関する委員会を設置。2006年に20号壕を整備し07年に一般公開した。

元沖縄国際大教授で、町文化財保護委員長の吉浜忍さんは、1989年に開館した南風原文化センターの常設展示で病院壕を再現したことなど、文化財指定の背景を説明し「センターは学びの場、壕は追体験の場になっていった」と軌跡を語った。

今後に向け、病院壕に足を運んでもらう取り組みの必要性を指摘。軽便鉄道や南風原絣などにも触れ「地域の多様な歴史と戦争との関わりを追求してほしい」と要望した。国学院大教授で、元町文化財保護委員の池田榮史さんは病院壕の調査研究に関わったことを振り返った。20号壕の向かいにある24号壕については95年に実測調査を実施したとし「将来的に整備するとなれば、鉄のフレームを入れて崩落しな いようにすることが必要」と述べた。戦跡については「まずは現地に入ることが重要で、入れなくなったとしても残すことが重要だ」と強調し、映像などを活用することで二重三重の平和学習の効果があると呼びかけた。

NPO安房文化遺産フォーラム共同代表の池田恵美子さんは千葉県館山市で、自然・歴史文化遺産をまとめて「館山まるごと博物館」と呼び、市民がガイドや保全整備を行っていることを紹介。宮古島市教育委員会職員の久貝弥嗣さんは宮古島での戦跡調査や平和学習の取り組みを解説した。

パネルディスカッションには南風原平和ガイドの会の井出佳代子会長も登壇。

司会は南風原文化センター学芸員の保久盛陽さんが務めた。