戦争遺跡保存全国ネットワーク
戦争遺跡保存全国ネットワークは、各地の戦争遺跡保存団体、文化財保存全国協議会、歴史教育者協議会などを中心に、団体や個人が集い、1997年に結成されました。日本近代史における戦争の実相を調査研究して記録し、戦争遺跡を史跡、文化財として保存し、もって平和の実現に寄与しようとする団体・個人の連絡・協議を推進することを目的としています。戦争遺跡の調査・研究・保存運動、平和資料館、平和教育などについて情報交換をするために、「戦争遺跡資料」の刊行、「戦争遺跡保存全国シンポジウム」の開催などをおこなっています。
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(1)戦争遺跡の調査研究と保存運動
戦争遺跡の調査・保存は、1975年頃以降、東京はじめ各地での空襲を記録する運動、大阪で始まる戦争展運動、沖縄などの平和資料館運動や歴史教育者協議会による地域の戦争体験と戦争遺跡の掘り起こし運動が基盤となりました。さらに、1981年頃からは、戦争遺跡に関する中学生・高校生・教師による調査活動や一般市民・運動団体の組織化が進みました。この様な先駆的な市民や学校での積み重ねの上に、1990年代以降に戦争遺跡の調査・保存の運動が展開されました。
戦争遺跡の考古学的調査は、沖縄戦の記録としての壕の考古学的調査と遺留品を資料として戦争の実相を明らかにする「戦跡考古学のすすめ」が、沖縄の當眞嗣一により提唱されました。
また、1998年の日本考古学協会沖縄大会で、戦争・戦跡の考古学分科会がもたれ、学会として戦争遺跡考古学を認定し、日本考古学が近代・現代をも対象にすることを宣言しました。
(2)文化財保護に対する行政の取り組み
沖縄戦の調査を行っていた南風原町は、1990年沖縄県南風原陸軍病院壕を戦争遺跡としては日本初の町史跡に指定しました。
1995年1月文化庁は「近代の文化遺産保存と活用について」の報告を行いました。ここで「近代の遺跡の保護の指針」として、
①史跡指定の対象とすべき遺跡の時期は、第二次世界大戦終結頃までとする。
②選択の基準は「我が国の近代史を理解する上で欠くことのできない遺跡であり、かつ歴史上の重要性をよく示し、学術上価値の高い遺跡であること」。
などでした。
1995年には広島市の原爆ドームが国の史跡に指定され、1996年世界遺産に登録されました。
(3)文化財としての近代遺跡の調査
文化財保護行政を統括する文化庁記念物課は、1996年度から近代遺跡の全国調査を始めました。所在調査は1998年度に、詳細調査は2003年度までに、報告書作成は2004年度予定であったが、いまだに発行できず、沖縄県を中心に更なる調査とまとめが急がれています。
(4)指定文化財・登録文化財になった戦争遺跡(2017年8月現在)
国指定文化財35件 県指定文化財17件 市町村指定文化財126件
国登録文化財80件 市区町村登録文化財12件 道遺産・市民文化資産3件
総数274件(戦争遺跡保存全国ネットワーク調べ)