【東京新聞】211122_明治のアワビ漁師に思いはせ-南房総千倉で散策
明治のアワビ漁師に思いはせ
南房総千倉の旧家など散策
渡米した足跡探る
明治時代、米カリフォルニア州モントレー湾に渡り、アワビ漁で成功を収めた漁師たちのふるさとを訪ねるウオーキングが十四日、南房総市千倉地区で行われた。約二十人がゆかりの旧家を見学しながら、およそ二キロの散策ルートを楽しんだ。(山田雄一郎)
ウオーキングを開催したのは、地元のNPO法人安房文化遺産フォーラムなど。歴史を知り、先人たちの姿から地域活性化のヒントを探ろうと、南房総市の市民提案型チャレンジ事業として行われた。同フォーラム関係者がガイドを務め、太平洋沿いの国道近くに立ち並ぶ旧家を見て回った。
ある旧家では、モントレー湾から持ち帰ったアワビの大きな貝殻が軒先で示され、ふだん目にする地元のアワビとは違った大きさに参加者は驚きの表情を見せ、手に取って確かめた。散策ルート上には、兄がアワビ漁師として渡米した、日本人初のハリウッド俳優早川雪洲の旧家も。近くのミニ博物館では、日米親善の国旗が描かれた大漁祝い着「万祝(まいわい)」やモントレー湾での様子などを撮影した写真に目を留めた。
東京都内の大学に通う佐野一成さん(21)は館山市出身。NPOの運営などに関する卒業論文をまとめるため、ウオーキングに参加した。アワビ漁に携わった旧家が密集して残る様子に触れ「昔の地域コミュニティーの在り方が分かって面白かった」と振り返った。
同フォーラムによると、一八九七(明治三十)年、根本村(現・南房総市白浜地区の一部)出身の小谷源之助(一八六七〜一九三〇年)・仲治郎(一八七二〜一九四三年)兄弟らがモントレー湾の豊富なアワビ漁に注目し、渡米。アワビステーキや缶詰などで成功を収めた。漁師たちは日本人コミュニティーをつくり、ゲストハウスには尾崎行雄、竹久夢二ら政治家・芸術家が訪れ、日米親善に寄与した。仲治郎は帰国し、現在の南房総市千倉地区で潜水技術者を養成し、米国に住む源之助のもとへ送り込んだ。