・オープニングセレモニーに500名が集う
・福田たねが描いた3作品、遺族から原画貸与と複製画寄贈
・ブロンズ像「刻画・海の幸」ソウルと久留米で除幕式
・秋のイベント
–手作り和紙人形展
–あいの浜ウォーキング
・布良俳句
・オープニングセレモニーに500名が集う
・福田たねが描いた3作品、遺族から原画貸与と複製画寄贈
・ブロンズ像「刻画・海の幸」ソウルと久留米で除幕式
・秋のイベント
–手作り和紙人形展
–あいの浜ウォーキング
・布良俳句
NPO法人安房文化遺産フォーラム 事務局長 池田恵美子
(『まち・むら』誌134号)
千葉県南房総地域に残る戦国大名里見氏の城跡や、戦争遺跡などの歴史・文化遺産が、時代とともに忘れ去られ、破壊されていく状況にあったところを、多面的に保存・活用活動に取り組み、多くの情報を発信(フォーラムやシンポジウム、遺跡ウォーキング、講演会、講習会等を開催)することによって、地域に自信と誇りを呼び戻し、この地を訪れる人びとにも波及し、新たな交流文化によるコミュニティ・ネットワークを広げようと活躍している。地域資源を活用し、参加と連携に多様な方法と工夫を用い、また、積極的な情報発信と幅広い人材活用・育成を行なっており、また、地域の活性化につながる「新しい公共」活動の実践事例およびNPO活動のモデルとして今後一層の発展が期待される。
前記のコメントは、NPO法人安房文化遺産フォーラムが、平成18年度あしたのまち・くらしづくり活動賞・内閣官房長官賞を受賞した際の、審査講評である。
あれから10年。館山市指定史跡となった館山海軍航空隊赤山地下壕跡は広く知られ、見学者は年間3万人を超えるようになった。戦後70年の節目であった昨年は、証言の会を重ね、米国テキサス軍事博物館から新資料を入手し、調査を深めながら、戦争遺跡保存全国シンポジウム千葉県館山大会を11年ぶりに開催した。
また、市道計画により破壊寸前であった里見氏稲村城跡は、17年にわたる保存運動の末、岡本城跡とともに国指定史跡を実らせた。NPO活動の拠点としてきた小高記念館も、昨年、国登録文化財となった。
足もとの自然や有形無形の文化遺産を「館山まるごと博物館」として捉え、豊かな地域資源に磨きをかけ、市民が主役のまちづくり活動に取り組んでいる。なかでも、日本を代表する明治の画家青木繁が滞在し、重要文化財「海の幸」を描いた小谷家住宅の保存運動は、全国の画家とともに取り組んだ活動事例として注目されている。
かつてマグロはえ縄発祥の漁村として栄えていた館山市富崎地区(布良と相浜)は、水産業の衰退に伴って少子高齢過疎化が深刻となっていた。青木繁「海の幸」がここで描かれたことは、市民にもあまり知られていなかったが、ゆかりの文化遺産を活かして地域活性化が図れないかと検討し、当NPOと富崎地区コミュニティ委員会の呼びかけにより、平成16年からまちづくりへの取り組みが始まった。
この経緯において、小谷家当主も地域活性化のために私邸を活用することに賛同したため、文化財専門家に調査を依頼したところ、安房地域の漁村を代表する分棟型民家として高い評価を得た。そこで、当主から館山市教育委員会へ指定文化財申請書を提出するとともに、当NPOが事務局を担って、青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会(以下、青木繁保存会)を発足した。小谷家住宅は館山市指定有形文化財となり、青木繁保存会が管理団体として選任された。
一方、青木繁を敬愛し、画壇の聖地として小谷家住宅を後世に残したいと願う美術家たちも、修復基金を創出する目的でNPO法人青木繁「海の幸」会(以下、「海の幸」会)を設立した。理事長は、女子美術大学名誉理事長であり、後にノーベル医学生理学賞を受賞する大村智先生が就任された。
目的を共有する青木繁保存会、「海の幸」会、館山市教育委員会生涯学習課、小谷家当主は四者協議会として話し合いを重ねた。文化財部分を修復するとともに、古い物置を増改築して当主の居住部とする費用として、総計4,300万円が見積もられ、基金目標額に設定した。
青木繁の没後100年にあたる平成23年、福岡久留米の石橋美術館・京都国立近代美術館・東京のブリヂストン美術館では、半年にわたる青木繁展が開催された。これを好機として小谷家住宅の修復基金を呼びかけようとしていた矢先に、未曽有の東日本大震災が起こった。全国で震災支援金が募られ、文化財保存の寄付は自粛せざるを得なくなった。
そこで、「海の幸」会では著名な画家によるチャリティ企画が提案され、青木繁「海の幸」オマージュ展が全国巡回で開催された。青木繁保存会も自治体に働きかけて、館山市ふるさと納税の中に、市指定文化財である「小谷家住宅の保存・活用に関する事業」を選定して寄付ができるように制度を整え、積極的に寄付を募った。
同年より、文化庁「地域の文化遺産を活かした地域活性化」事業に4年連続で採択され、地域住民への理解と支援を呼びかけるべく、青木繁「海の幸」フォーラムやまちづくり講座の開催、報告書「ヘリテージまちづくりのあゆみ」の発行などをおこなった。
文化庁の5年目に委託された「NPO等による文化財建造物の管理活用」事業では、造園や垣根作りなどの環境整備、館内の展示設営などを、住民参画型のワークショップ形式で作り上げた。
いよいよ2年間の修復工事を終え、竣工直前に修復基金は充足した。5年に及ぶ文化庁事業をはじめ、様々な取り組みの経費を加算すると、総額約7,000万円近い事業を市民の力で成し遂げたのである。今春、4月29日に念願の青木繁「海の幸」記念館が開館した。
開館に先立ち、青木繁保存会の発起人である河正雄氏より、ブロンズ「刻画・海の幸」の5体鋳造と寄贈の申し出があった。河氏は在日韓国人二世の美術メセナであり、作者は館山市在住の彫刻家・船田正廣氏である。戦後70年と日韓国交正常化50周年の節目に、美術友好と平和祈念の証として日韓5ヶ所に設置されることになった。
館山の青木繁「海の幸」記念館・小谷家住宅、福岡久留米の青木繁旧居、そして韓国ソウルの秀林アートセンター、光州市立美術館、霊岩郡立河正雄美術館。平和の文化で結ばれたネットワークは、国境を越え、東アジア共同体のまちづくりに寄与している。
・所在地 〒294-0234千葉県館山市布良1256
・開館日 毎週土・日曜(お盆時期・年末年始を除く)
・開館時間 4〜9月10:00〜16:00 =10〜3月10:00〜15:00
・維持協力金(入館料)一般200円 小中高100円
・友の会:年会費2,000円
(ぐるっと千葉2016.6)‥⇒
(東洋経済新報2016.2.26付)‥⇒印刷用PDF
(房日新聞2016.6.1付)‥⇒印刷用PDF
青木繁の海の幸を原寸大に彫刻した『刻画・海の幸』が、韓国ソウル市に開館した「秀林アートセンター」に設置された。日韓交流の懸け橋として寄贈されたブロンズレリーフで、館山市布良の小谷家住宅「青木繁『海の幸』記念館」にも同じものがある。現地であった除幕式には、館山側からNPO法人安房文化遺産フォーラムの愛沢伸雄代表らも臨んだ。
館山美術会顧問の彫刻家・船田正廣氏が制作した塑像を、同氏と親交がある河正雄氏が理事長を務める韓国財団法人「秀林文化財団」がブロンズレリーフにし、日韓の5カ所に寄贈している。
除幕式には約300人が参加。河理事長は「この素晴らしい作品は、日韓友好の架け橋として両国で光を放ち、これから大きな役割を果たしていくだろう」と述べたという。
渡韓した愛沢代表は、除幕式のほか現地であった文化遺産を活用したまちづくりフォーラムのパネリストとして参加するなど日韓の交流に務めた。
(読売2016.5.19付)
明治の洋画家、青木繁の「海の幸」のブロンズレリーフが韓国のソウル市に開館した秀林アートセンターに設置された。12日の除幕式に出席した館山市のNPO法人安房文化遺産フォーラムの愛沢伸雄代表(64)が除幕式の様子を語った。
レリーフは館山市の彫刻家船田正廣さん(78)が塑像を制作、韓国光州市立美術館の河正雄(ハジョンウン)・名誉館長(76)がブロンズ制作を申し出た。日本に2枚、韓国に3枚寄贈された。
愛沢代表によると、同センターは美術教育や日韓美術交流の拠点として、河さんが理事長を務める秀林文化財団がオープンさせた。開館式を兼ねた式典には韓国側から政府関係者や文化人ら300人、日本からも大学や国際交流団体、財団と日本側の橋渡し役になったNPO関係者が招かれ、河さんや愛沢代表らが除幕を行った。
(房日新聞2016.5.18付)
先月29日に一般公開がスタートした館山市布良の小谷家住宅「青木繁『海の幸』記念館」のゴールデンウィーク中(4月29日〜5月8日)の来場者が562人にのぼり、人気ぶりを示した。GWは特別公開で、現在は土、日曜日に公開されている。
明治を代表する画家・青木繁が逗留(とうりゅう)し、代表作で国の重要文化財「海の幸」を描いた小谷家を、当時の雰囲気を残す形で修復し、記念館として公開した。館内には海の幸のレプリカや関連資料などを展示し、ガイドが案内にあたっている。
開館後の出足は順調。来場者の半数以上は県北や都内からで、青木繁、海の幸の人気の高さをうかがわせる。4日には105人が訪れたという。
千葉市から夫婦で訪れた押尾哲人さん(69)は「新聞で一般公開を知り、館山に来た。ガイドの説明も丁寧で分かりやすかった。関連資料も豊富で、青木繁が好んだ布良地区のこともよく知ることができた」
小谷家の現当主で記念館館長の小谷福哲さんは「多くの人が来訪され、順調な滑り出しとなった。皆さんガイドの説明を熱心に聞いて、関心の高さを感じた。今後もしっかりと案内をし、青木繁、富崎地区の魅力を伝えたい」と話している。
入館料は200円(小、中、高校生は100円)。時間は午前10時から午後4時まで。
問い合わせは、青木繁「海の幸」誕生の家と記念碑を保存する会(0470-22-8271)まで。
(東京新聞2016.4.26付)‥⇒印刷用PDF