芸術文学散歩に30人
NPO主催 館山の痕跡巡る
(房日新聞2012.10.23)
NPO法人安房文化遺産フォーラム主催の「芸術文学散歩バスツアー」がこのほど行われ、30人が明治時代から昭和にかけて館山を訪れた芸術家や文人墨客の痕跡を巡った。文化庁の補助事業で企画、9月に20人が参加したのに続いて2回目。
ツアーでは青木繁が滞在した小谷家、塩見海岸の中原淳一詩碑、館山総合高校水産校舎では、長崎の平和祈念像制作者北村西望作の旧安房水産高校初代校長の銅像、布良崎神社に残る画家、寺崎武男の奉納画2点などを見学した。同フォーラムによると布良崎神社の奉納画は、最近、寺崎の作品であることが分かり、このツアーで初めて公開された。
寺崎は東京美術学校を卒業。農商務省実業講習生としてイタリアに留学した。日本創作版画協会の設立に関わったが、彫刻家で東京美術学校彫塑科初代教授を務めた長沼守敬を慕って館山に移住。旧制安房中で美術を指導し、安房神社や下立松原神社などに神話の絵画を奉納した。1967年没。
同フォーラムでは、21日に富崎小学校で開かれる「青木繁《海の幸》フェスタ」でこの2点を展示した。
《海の幸》フェスタ富崎地区であす開催
(房日新聞2012.10.20付)
青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会と、NPO法人安房文化遺産フォーラムが館山市富崎地区コミュニティ委員会との共催で21日、「青木繁《海の幸》フェスタ」を旧富崎小で開催する。富崎コミュニティのつどいとして、文化庁補助事業を活用して企画。参加無料で多くの来場を呼びかけている。
つどいは、午前9時から午後3時まで。青木繁が逗留した小谷家住宅や記念碑などを巡るウォーキングやレク大会、DVD鑑賞、影絵劇とトークショー、布良に関連した語り部、「いっちゃぶし」「安房節」の民謡などが繰り広げられる。
また、小谷家からみつかった明治時代の資料や、富崎の今と昔を撮った写真展、明治の漁村を知る資料などが展示される。
青木繁《海の幸》フェスタにぎわう
多彩な催しで富崎再発見、地区コミュニティとコラボ
(房日新聞2012.10.24付)
青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会による「青木繁《海の幸》フェスタ」が21日、休校中の館山市富崎小で開かれた。地元の富崎地区コミュニティ委員会と共催し、地区在民によるコミュニティのつどいとコラボしたイベントで、レク大会や写真・資料展示、影絵劇、トークショー、語り部などがあり、青木繁が愛した「漁村富崎」を見つめ直した。
この日はグランドゴルフやペタンクなどのレク大会が校庭で行われた後、体育館に会場を移し、テレビドラマ「太陽にほえろ」のボン刑事で活躍した俳優の宮内淳さんが主宰する影絵劇団かしの樹が、神話と友情を描いた「走れメロス」を公演。続いて、20年来の親友という宮内さんと館山市坂田のダイバー成田均さんが、「海からの贈り物」をテーマに対談した。宮内さんは、幸せで豊かな生活を実践するための公益在団法人地球友の会の代表理事。成田さんは、同会の理事という間柄。成田さんは、素潜りの世界記録保持者である故ジャック・マイヨールがイルカから学んだという地球との共生という生き方について語った。
午後からは「新発見!青木繁が滞在した明治の漁村・富崎」を、青木繁が滞在した小谷家の現当主・小谷福哲さんらが解説。今年7月の小谷家住宅見学会で発見され、会場に展示された「近代水産の父」とされる関澤明清の明治23年(1890)の手紙から、小谷家の居間に飾られてきた「日本重要水産動植物之図」3枚が、当時、水産伝習所長であった関澤から、小谷家当主の喜録に、伝習所生が世話になったことを感謝し贈られたものであることなどが説明された。千葉県水産試験場で、長年アワビの増殖・種苗の研究を重ねてきた大場俊夫氏は、関澤明清の書簡は、近代水産業発展のうえで布良が果たした重要な役割をうかがわせるものと新発見資料を高く評価した。
語り部「さくら貝」からは庄司民江さんが「布良星」、館山三中2年生の浜田雅子さんが「タコのうらみ」と、ともに布良に伝わる伝承を熱演。最後は婦人会が、踊り「いっちゃぶし」「安房節」を披露。「漁村の民謡は長寿の秘訣」とみんなで踊って閉会した。
小谷家保存する市民団体に助成金
(房日新聞2012.7.20付)
館山市の青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会にこのほど、日本興亜おもいやり倶楽部から、活動助成金として10万円が贈られた。
青木繁が滞在した同市布良の小谷家住宅前で贈呈式が行われ、保存する会の嶋田博信会長に手渡した。
同クラブは、日本興亜保険グループの役職員有志が会員。社会貢献活動として、毎月の給与から拠出した金額に日本興亜損保が同額を上乗せして贈っている。
(朝日新聞2012.10.13付) ⇒印刷用PDF
近代水産業の父、書簡見つかる
館山・小谷家に伝習所長としてお礼
青木繁も見た? 動植物図贈る
夭折(ようせつ)した画家・青木繁が滞在した館山市布良(めら)の小谷(こたに)家で、「近代水産業の父」とされる関沢明清(あけきよ)の手紙が見つかった。小谷家に伝わる「日本重要水産動植物之図」は関沢の贈ったものと判明。当主の小谷福哲(ふくあき)さん(61)は「青木繁もこの図を見たはず」という。
小谷家には、東京美術学校(現在の東京芸大)を卒業した青木繁や恋人の福田たね、同郷の画家坂本繁二郎らが1904年7月中旬から8月末まで暮らした部屋がそのまま残る。市の有形文化財に指定され、NPO法人安房文化遺産フォーラム(愛沢伸雄代表)が見学会を開いている。
手紙は今年の7月の見学会で見つかった。小谷福哲さんが居間の押入れの奥にあった木箱から手紙を見つけた。「水産伝習所長 関沢明清」の手紙は1890年9月10日付、小谷喜録あて。「生徒御地出張中はご多忙のなか、漁具その他の説明を煩わし生徒も満足致しおり候」と、伝習所生がお世話になったことを感謝して、お礼に水産動植物図を贈ると書いてある。
小谷家の居間に飾られてきた「日本重要水産動植物之図」3枚は、関沢の贈ったものと分かり、図が入っていた木箱も出てきた。
動植物図は、タテ50センチ、横65センチほどの紙にマンボウやサメなど魚類83種、イセエビ・サザエなど甲殻類・貝類51種が描かれている。フランス革命100周年記念で1889年に開かれたパリ万博のため、農商務省水産局が作った日本発のカラー石版画で、大事の下にフランス語訳もある。
同じ図は金沢大附属図書館にもしょぞうされている。海藻やアシカなどを収めた第4図もあるというが、小谷家では飾っていなかった。
当時の当主、小谷喜録は網本として人望も厚く、村議も務めた。水産伝習所の生徒に漁法などを教え、動植物図は額にいれて、居間のなげしに飾られた。
スケッチ旅行に来た青木繁たちは、その居間で暮らした。青木はチジンにあてた絵入りの手紙(1904年8月22日付)でクジラ、マグロ、フカ、イセエビなど40種類を列挙し、大作「海の幸」に取り組んでいることを示唆した。喜録から3代目の福哲さんは「青木繁たちも水産動植物図を見ているはず。この図をヒントに魚を覚えたのかもしれません」と語る。
動植物之図や関沢の書簡は21日、旧館山市富崎小学校で開く「青木繁『海の幸』フェスタ」に展示される。入場無料。問い合わせは事務局(0470・22・8271)へ。
(清水弟)
(北國新聞2012年10月2日)
水産業の父の魚類図、加賀藩出身の関澤明清
千葉の網元に贈呈、漁業へ情熱示す
⇒印刷用PDF
渚の博物館「海の幸」オマージュ展
延べ8250人が入館
房日新聞 2012年9月14日
館山市館山のなぎさの博物館で開催された巡回展「青木繁『海の幸』オマージュ展」(6月26日〜9月2日)の入館者数がまとまった。開館日数の60日間で、延べ8250人が入館した。1日あたりの平均入館者数は138人だった。
同市や同市教委、NPO青木繁「海の幸」会が共催した展覧会。NPO青木繁「海の幸」会は、青木が同市で宿泊した小谷家の保存と警官の環境整備を目的に活動。明治時代の画家、青木繁(1882〜1911)が代表作「海の幸」を描いた同市と、東京、銀座で開催した。
展示では未公開の8点を含む、青木のデッサン画17点をはじめ、画家56人の作品64点が飾られた。
1日の入館者数が多かった日は、8月の盆の14日が541人、15日が304人。関連イベントもあり、洋画家佐々木豊氏と美術評論家、ワシオ・トシヒコ氏のギャラリートークには60人が、福岡大学人文学部教授、植野健造氏を招いたふるさと講座には71人が参加した。
入館者からは「小谷家はどこにあるか。行ってみたい」などと関心を寄せる声が多く聞かれた。
読者のコーナー 【鋸南町 溝口七生】
青木繁「海の幸」オマージュ展に感動
房日新聞 2012年8月18日
“渚の駅”たてやま渚の博物館で開催中の『青木繁「海の幸」オマージュ展』を観て、大きな感銘を受けた。
まず、青木繁が布良に滞在した時のもの、初公開のものも含まれた貴重なデッサン作品17点を興味深く観て、改めて青木繁の非凡な才能、芸術感覚の鋭さ・豊かさなどが感じられた。
さらに、『青木繁「海の幸」会』のメンバー有志らの作品群も見応えがあった。その顔ぶれが凄い。現代日本画壇のトップレベルの画家たちの作品がこれだけ一堂に展開される展覧会は稀なことである。
日本芸術院会員の奥谷博、中山忠彦、塗師祥一郎、大津英敏は小作と大作の2点ずつの出品。この4人を始めとして、日展や主要美術団体の審査員や役員や中心会員、美術大学教授たち、入江観、馬越陽子、内山孝、張替眞宏、楢崎重視、齋藤研、吉武研司、安達博文、棚瀬修次、川村良紀、金井訓志、浅野輝一、吹田文明など、美術界で名の知れた人たちの魅力的な作品が並んでいる。
青木繁へのオマージュを直接的に表現している作品もある。地元作家の船田正廣の「海の幸」の模刻作品、福田たねを描き入れた作品、自画像を元にした作品、小谷家や布良を描いた作品など。
作品ジャンルも油彩、水彩、日本画、水墨、版画と変化に富んでいるし、伝統的写実的作品と現代美術的抽象作品と作品傾向の幅も広く、小品が多いのではあるが、安房地域で開催された数多くの展覧会の中でも一、二を争う貴重な、レベルの高い展覧会となっていると思う。
なんども会場に足を運び、じっくり鑑賞し、味わっている。
9月2日まで開催されるとのことで、さまざまな関連資料とともに、ぜひ多くの方々に観て頂きたい展覧会である。
「海の幸」会の会員は500人にもなっているとのこと。私もその一員に加わって今展にも参加しているが、小谷家を復元・保存し、記念館へという運動が、地元の館山市と『青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会・NPO安房文化遺産フォーラム』の活動と連動して大きな盛り上がりを見せてくれることを期待している。