富崎(布良)の神話②〜布良星
♪ アーエ 伊豆じゃ稲取 房州じゃ布良よ
粋な船頭衆の出るところ
♪ アーエ 船頭させても とも取りゃさせぬ
押さえ ひかえがままならぬ
房総半島南端の布良(めら)のマグロ延縄漁発祥の漁村です。江戸時代から栄え、明治初期には布良型改良漁船の建造に成功し、その名を全国に知られるようになりました。
厳しい冬季の沖泊まり漁は眠気と寒さの闘いで、励まし合うために歌われたのが「安房節」です。危険な漁は水難事故が絶えず、明治から大正のはじめにかけて、布良では500人以上の漁師が亡くなりました。冬に赤く輝く星(カノープス)は、亡くなった漁師の魂とされ、全国で「布良星」と呼ばれています。
また、布良の隣村の白浜町滝口では、もうひとつの伝説があります。各地で修業を重ねた西春法師は、木食行・不食行三百日を経て入定の行(即身仏の行)に入った際、「土中より鉦の音がきこえなくなったら3年後に掘り出して堂内に安置してほしい」「死んだ後に星になり、時化の前には南の空に現れて危険を知らせよう」と言い残したといいます。このことから、カノープスは「西春星」「入定星」とも呼ばれています。
カノープスは、真冬の空気が澄んだ夜にだけ、真南の水平線すれすれに見ることができます。地球から310光年の距離にある超巨星です。南側の地軸近くにあるので、人工衛星打ち上げの目標になっているともいわれます。
伝説によると、トロヤを攻めたギリシャ艦隊の水先案内人の名前です。彼がエジプトのアレキサンドリア港で病死したので、メネラオス王はそこに碑をたて、夜空に大きく輝く星に彼の名前をとってカノープスとつけたと伝えられています。
中国ではこの星を、南極老人星や老人星と呼んで、都からこの星が見えると、天下泰平であるとお祝いをしたそうです。