富崎の年間行事
※布良と相浜では、多少異なるところがあります。今ではとても簡略化されています。
●正月の準備(暮れのうち)
カツオを開き、頭は残したままエラとハラワタをとり、塩をたっぷり入れて4〜5日おき、10日くらいよく干したものを「かけのい」といい、ゆでた伊勢海老といっしょに神棚に飾る。神棚からおろして正月に食べるが、「かけのい」は保存がきくのでいつ食べてもよい。焼いて熱湯をかけ塩を抜いて食べる。
○12月28日ごろ…餅つき
朝早くから親戚や近所が集まって餅つきをする。お供え用、雑煮用、保存食用として切る。アンコを入れた「あんびん」を作って近所に配る。アラレやカキモチは、家の中にゴザを敷いて、乾くまで薄陽で干す。炒ったり、焼いたり、揚げたりして食べる。作業のとちゅうで、大根おろしのからみ餅など食べる。
○12月28日から30日…お飾りをつるす
男衆が作り、わらを×形に編む。一夜飾りは避ける。三隣亡や仏滅も避ける。大神宮の神棚に竹を横につるし、かつお、昆布、するめ、伊勢海老、海産物を5品または7品をさげる。お飾りは便所、かまど、船を持っている家、井戸、墓にも年をとらせるようにつける。
○12月31日…大晦日
そばを食べる。一本でも残すと、お金に不自由するといわれた。
正月は切れるもの(包丁やハサミ)を使ってはいけないといわれるので、大晦日までに「せっち(おせち)」料理やお雑煮の下ごしらえをしておく。
●お正月
○元旦
氏子神社へお参りに行き、お神酒をいただく。漁師の家では三が日の間、家長が朝食の支度をする。雑煮は、大晦日に準備しておいた鰹だし・さといも・大根に、元旦の朝、薄く切った生餅と青菜を加えてさっと煮て、神棚にあげる。残りを醤油で味つけて、焼いた餅を入れて、おせっち料理と一緒にいただく。
○1月2日 船祝
大漁を祈願する祭り。船主が祝銭とみかんや菓子などを撒く。
○1月7日 七草かゆ
七草に限らず、ある草でかゆをつくる。玄関の飾りをおろす。
○1月14日 鏡もち、家の中のお飾りをおろす。
○1月15日
朝、境内でお飾りを燃やし、その灰を家の回りにまく。
病気にならないように、火にあたる。橙は竹にさして汁を子供は吸ったり、風呂に入れたりする。餅は水餅にする。
○1月16日 やどり
嫁に行った人が家に帰ってきてのんびりする日。
○2月3日 節分
お参りにいく。玄関にはヒイラギをさす。かつては竹の棒にザルを掲げた。夜は「福じゃ」といい、大豆を鉄瓶に入れて、すくってそのお茶を飲むと、福がくるといわれる。
○2月初午 稲荷講
それぞれの講で稲荷様を守っており、その家へ順番に行きご馳走になる。昭和50年ころまでは、夜、子どもたちが地区内の各家庭をまわり、「♪お稲荷さんのお初、あげておくれ、あげねと商売繁盛させね♪」といってお金をもらっていた。
○2月 雛人形を飾る。
○3月3日 桃の節句
女の子の初節句では、親戚に手伝ってもらってご馳走を作り、ご近所も一緒にみんなで祝う。桜餅を食べる
○3月21日 彼岸
ぼたもちをつくり、親戚に配る。
○3月27、28、29日 相浜神社の祭礼
近年では、週末にずらしておこなう。
○5月5日 端午の節句
男の子の初節句では、3月の節句と同じように祝う。
○5月8日 お釈迦さま
相浜では、1ヶ月遅れの花まつり。蓮壽院へビンを持っていくと、甘茶をくださる。その甘茶を入れた墨で習字を書くと、字がきれいになるといわれる。
○7月19、20、21日 布良崎神社の祭礼
近年では、週末にずらしておこなう。
●お盆
○8月1日 新盆
親戚が朝早くきて燈籠、墓などの飾りをつくってくれる。施主は朝食の用意をする。新盆の線香をあげにきてくれた人に、団子、ソーメンをお返しする。
○8月13日 迎え火
早朝に棚をつくる。仏壇に旬の野菜や果物を供える。夕方、「この灯りできゃぁしぇ(来なさい)」で言って迎え火をたく。浜から新しい砂を持ってきて、線香をたく。かど火といって、近所の人に声をかける。
○8月14日 きんぴらごぼう、団子を供える。
○8月15日 ごま和え(なす・いんげん・ひょう)、素麺を供える。
○8月16日 送り火
弁当(きなこと塩のたわらむすび)を供える。ご近所で集まってかど火をたき、「この灯りでけらっしぇ(帰りなさい)」 とお見送りする。
昭和40年くらいは海にまだ流した
○9月23日彼岸
おはぎをつくる
○10月 恵比寿講
大漁を祈願し、恵比寿様を祀る。野菜7品、頭付きの魚、大きめの煮しめをつくる。神棚へ供える。家長が恵比寿様に感謝し、神棚からご馳走を下げるときに、家族はそのご馳走膳を買う儀式をおこなう。家長が「さあ買った、買った、いくらで買う」と聞き、家族はそれぞれ安い金額から高い金額を言う。実際にお金の支払いはないが、言葉のうえで「売った」「買った」のセリが成立すると、それを食べてよい。
○11月15日 七五三
氏子神社にお参りをする。祝ってもらう親戚に頼み、ご馳走を作ってもらいお祝いの席を設ける。
○その他、古峰講
大正6年頃、相浜でマゴロク火事があった際、古峰様(火の神様)を祀った掛軸があったマツヤという家だけが焼け残ったことから、古峰講が始まったという。毎月、各家庭を順番でまわり、年に一度、当番の人が代表で栃木県鹿沼市の古峰神社へお参りに行った。現在は高齢化のため、講が解散したが、信心する人はグループで参詣している。