11月3日 旧安房南高校から講演を生配信
木造校舎の魅了紹介
(房日新聞2021.10.3付)‥⇒ 印刷用PDF
県教育委員会は11月3日、館山市の安房南高等学校旧第一校舎(県指定有形文化財)の魅力を伝えるオンライン講演会を開催する。事前申し込み制で参加費は無料。同1日まで参加者を募っている。
旧安房南高等学校の前身である県立安房高等女学校の校舎が、大正12年(1923)の関東大震災により倒壊したため、災害の経験を生かした耐震構造建築として、昭和5年(1930)に新築されたもの。建設当時の様子をよくとどめており、平成7年(1995)3月14日に県指定有形文化財となった。
講演会は、鋸南町の保田小学校や、大多喜町役場のリニューアルなどに関わった建築家、夏目勝也氏を講師に、木造校舎の魅力を現地から伝える内容。
時間は、午後1時から2時半まで。申し込みは、NPO法人安房文化遺産フォーラムのホームページ=QRコード=から、フォームに入力して申し込む。後日、メールにて送付されるZoomのアドレスと、パスワードを使用して配信を視聴する。
詳しい問い合わせは、安房文化遺産フォーラム(0470-22-8271)へ。
(朝日新聞夕刊_2021.3.15)‥⇒ 印刷用PDF(A3)
【まちの記憶 館山市街地】
南国気分の保養地に戦争遺跡 黒曜石・里見氏…栄えた海の要衝
歩き出すと、次の角の向こうに何があるのかとわくわくが止まらない。今月初めに訪れた館山はそんな町だった。
以前はJRの特急が定番だったが、今は本数の関係で東京駅発の高速バスがおすすめ。2時間ほど乗ると、旧市街が広がる館山駅(千葉県館山市)の東口に着く。西口へ回れば、見えてくるのは南欧スタイルの駅舎。海岸線までは明るい色の町並みが続き、リゾート気分が漂う。
駅から、伊豆大島などが見える洲埼灯台までは、車で20分。途中にはレストランなどを併設した「〝渚の駅〟たてやま」があり、テラスからは館山湾が一望できる。
館山市立博物館主任学芸員の岡田晃司さん(63)によると、館山に人が住み始めたのは、約7千~5500年前の縄文前期。「市内出土の黒曜石は伊豆諸島の神津島産。海上交易が行われていたようです」と岡田さん。古墳時代には、大寺山洞穴遺跡などに、舟に人を葬る舟葬墓が造られた。漁労など、海に関わる人々の墓とみられる。
戦国時代に入ると、館山はのちに曲亭馬琴の小説「南総里見八犬伝」とモデルになった里見氏の支配下に入る。
里見氏は市内の稲村城などを居城に安房を治め、一時は房総半島全域に覇を唱えた。
そんな里見氏の居城の一つだった館山城跡は現在、城山公園となり、花の名所として季節ごとに市民が集う。高台に建てられた模擬天守の内部は「八犬伝博物館」で、NHKの連続人形劇「新八犬伝」で使われた辻村寿三郎作の人形などを見ることができる。
江戸時代の館山は物流の集積地・中継地として栄え、押送船という快速船で、江戸までを一昼夜で結んでいた。当時の漁業の様子がよくわかるのが、海沿いの「〝渚の駅〟たてやま」にある「渚の博物館」の展示だ。一方、城山公園の館山市立博物館では、企画展「武士たちの明治」(21日まで)で、大政奉還後の1868年に、駿河から館山に移封された長尾藩の侍たちが、71年の廃藩置県によってもたらされた新しい時代にどう対応したのかを紹介している。
そんな館山が大きく変わったのは近代以降だ。蒸気船が東京との間を5時間で結ぶようになり、近代水産業の拠点として1901年に水産講習所の実習場が開設された。
保養地としても有名になり、イラストレーターで詩人の中原淳一も晩年の足かけ22年を過ごしたという。
☆ ☆
館山で忘れてはならないのが、戦争遺跡の存在だろう。
市内に残る戦争遺跡は47カ所。戦闘機を隠す掩体壕や海軍砲術学校跡など重要なものが多く、2004年には総延長1.6キロ超といわれる館山海軍航空隊の赤山地下壕跡が市によって公開され、05年に市指定史跡となった。多い年には3万8千人が訪れる。内部には工事に使われたツルハシの跡が残る。
NPO法人安房文化遺産フォーラム(愛沢伸雄代表、0470-22-8271)の事務局長を務める池田恵美子さんによると、館山海軍航空隊は関東大震災で隆起した館山湾の一部を埋め立てて1930年に開隊した実戦部隊で、西風を強く受ける特性を生かして短い滑走路で離着陸訓練を行っており、基地は「陸の空母」と呼ばれていた。
「私たちは赤山地下壕を、専門部隊によって秘密裏に造られた地下航空施設と考えています。房総半島南部はハワイ・オアフ島周辺と地形が似ており、真珠湾のフォード島と館山航空基地も近似していることから、1941年の真珠湾攻撃を想定して、パイロット養成が早い時期から行われていたのかもしれません」。
フォーラムではこのほか、画家・青木繁が滞在して「海の幸」を描いた小谷家住宅を修復して「海の幸」記念館にしたり、昭和初期の建築様式を残す旧安房南高校木造校舎の保全活動や見学会を行ったり、明治期に渡米したアワビ漁師・小谷仲治郎の旧宅から発見された古文書や書画の整理・解読を進めるなどして、地域史の掘り起こしと活用に力を注ぐ。町歩きにはフォーラムの「館山まるごと博物館」などの小冊子(600円)が便利だ。
(編集委員・宮代栄一)
東京にゆかりの老舗旅館
館山市街には東京にゆかりの深い店が少なくない。館山駅前の幸田旅館は1907(明治40)年に東京・本郷から移転した老舗。女将の幸田右子さん(69)は「東京では旧幕臣の榎本武揚さんにひいきにしていただきました。初代が体を壊し、静養もかねて開業したそうです」。
当時の写真をみると、海岸線までほかに建物はほとんどない。館山駅の前身の安房北条駅の開業が19年で、当初は船が唯一の交通手段だった。
南房総随一の料理旅館だったが、23年の関東大震災で全壊。現在の建物は「当初の部材を一部使い、建て増しを繰り返したもの」という。とはいえ、本館1階の内玄関つき客室「桜」の間には桜材を多く使うなどの凝ったつくりで、往時がしのばれる。「コロナで団体さんが減って大変。外で修行中の息子が継いでくれるまで頑張ります」
大正のレトロ建築でカフェ
築港前交差点にあるTRAYCLE Market&Coffeeは知識絵理子さん(44)&淳悟さん(43)夫妻が経営する、フェアトレードコーヒーとおからマフィンが売りのカフェだ。2016年に開店した。
大正初期に建築された古川銀行の鴨川支店を、鳩山一郎内閣で文部政務次官などを務めた詩人の小高熹郎氏が、昭和の初めに移築。水産事務所などをへて、小高氏を顕彰する「小高資料館」などとなったが、孫の絵理子さんが受け継ぎ、改装した。おからマフィンは試作を重ねたオリジナルで、抹茶&桜あん、コーンとツナのサラダなど、毎日、8種類前後を販売。「朝6時から百数十個を焼く」(淳悟さん)というが、早い日には数時間で売り切れる。絵理子さんは「『毎日食べてもあきない』を目指して作りました。今はコロナでテイクアウトのみですが、たくさんの人に食べてほしい」と語る。
動画で建築美を紹介・安房南高校旧第一校舎
千葉県チャンネル第1号に
…⇒ YouTube動画 …⇒ 印刷用PDF
館山市の県指定文化財、県立安房南高等学校旧第一校舎の動画が9日、県教委が開設したユーチューブ「ちばの文化財紹介チャンネル」の第1号として公開された。秋の一般公開が2年連続中止となる中、動画で多くの人に知ってもらおうと県とNPO法人安房文化遺産フォーラムが制作した。
大正12年の関東大震災で倒壊した校舎の建て直しで、耐震構造建築として昭和5年に新築された校舎。左右対称の気品ある木造建造物で、平成7年に県指定有形文化財に指定された。
20年に安房南高校が安房高校に統合され幕を閉じて以降、毎年10月下旬に一般公開され、30年からは同NPOがガイドを担ってきたが、昨年度は台風災害、今年度は新型コロナウイルスの感染拡大で中止に。新たな情報発信の手段として、動画を制作し、同チャンネルが開設されることになった。
紹介映像は8分43秒で、チーバくんとともに、伝統的な木造建築と西洋風の要素が融合した和洋折衷の建築を解説。玄関、窓、階段などの高度な装飾に焦点を当て、ナレーションは、安房高校演劇部2年の髙梨はつきさんが担当した。
「木造校舎を愛する仲間たちで日ごろから手入れをしてきたかいがありました。早くコロナが収束して見学会が開催できるといいですね」と同NPOの池田恵美子さん。
同チャンネルでは、第1弾で南房総市の「白浜の屏風岩」を含む5本を公開。今後、随時文化財や遺跡の発掘調査の様子などを発信していくという。
安房高等女学校にみる地域教育 ~大正期を中心に考察
愛沢伸雄(安房高等女学校木造校舎を愛する会事務局長)
⇒ 新聞PDF ⇒ 原稿PDF
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「安房地域の図書館史」語る
安房歴史文化研究会_25日に館山で公開講座
房日新聞(2019.5.18付)⇒PDF
安房歴史文化研究会の今年度第1回の公開講座(通算59回)が、25日午後2時から館山市北条の市コミュニティセンターで開かれる。安房文化遺産フォーラムの会員の関和美さんが「安房地域の図書館史」のテーマで語る。資料代として200円。
関さんによると、近代的な文庫や図書館が設置されたのは明治期から。安房地域で明治期に設置された文庫・図書館には、1903(明治36)年に開設された佐久間村(現、鋸南町)の「御大典記念私立奥山文庫」や、1912(明治45)年に設置された館野村(現、館山市)の「簡易図書館」などがあるという。
「学校図書館」については不明なことが多いが、千葉県教育史に位置付けられる旧安房南高等学校資料を確認しているなかで、学校図書館に関わる貴重な資料が発見された。その資料を検証するとともに、戦後日本の学校図書館の発展に重要な役割を果たした長狭高等学校図書館活動の資料などを紹介する。
安房地域の図書館活動に関わる人物や出来事では、とくに鴨川地域で戦前から文化活動のリーダー的存在であり、その後鴨川町図書館長として功績があった医師原進一氏を中心に取り上げる。あわせて今を生きる安房の「図書館人」に求められていることを考察するという。
問合せは、事務局の石崎和夫さん(0470-23-6677)へ。