保存運動の経緯

■概要

西洋画として我が国最初の重要文化財に指定された《海の幸》は、1904(明治37)年に青木繁が房州の漁村・布良(館山市富崎地区)の小谷家に逗留して描いたものである。明治期にはマグロ延縄漁で栄えていた同地区の現在は、人口が500世帯1,000人、うち過半数は65歳以上、小学校児童は17名という超少子高齢集落である。

《海の幸》誕生100年を契機に、ウォーキングやシンポジウムを重ねて地域への誇りを育み、小谷家住宅と青木繁の没後50年に建立された記念碑を後世に残そうという機運を高めてきた。高齢コミュニティの再生と地域活性化を目ざし、2005年から取組んできた。

■年表

1904年 =夏 青木繁、坂本繁二郎、森田恒友、福田たね、房州布良滞在。 《海の幸》制作。

1905年 =青木繁、福田たね、房州再来訪。第一子・幸彦誕生(後の福田蘭童)。

1911年 =青木繁、没(28歳)。

1961年 =青木繁、没後50年。県営館山ユースホステル開業に連動し、館山市長、坂本繁二郎、辻永、河北倫明ら画壇の著名人が発起人となって、《海の幸》記念碑建立計画、募金開始。

1962年 =《海の幸》記念碑建立。設計:生田勉(東大教授)。

1998年 =館山ユースホステル廃業に伴い、国有地にあった記念碑に解体・撤去命令。富崎地区コミュニティ委員会や同地区連合区長会が、記念碑保存の要望運動を展開。その結果、館山市が国有地の借地料を支払い、記念碑は解体をまぬがれて現在に至る。

2005年 10月 =ブリヂストン美術館にて特別展示「青木繁《海の幸》から100年」開催。吉田昌男富崎地区連合区長会長よりNPO安房文化遺産フォーラムへ地域活性化の協力要請。

2005年 12月 =NPO安房文化遺産フォーラムとコミュニティ委員会の協働により富崎小学校体育館にて、「〝青木繁《海の幸》100年〟から布良・相浜を見つめるつどい」開催。シンポジウムにて小谷家当主・小谷栄氏より、「100年前に青木繁が泊まって《海の幸》を描いた住宅を、地域の子どもたちのために残していきたい」と発言。 … NPO安房文化遺産フォーラムでは小谷氏の発言を真摯に受け止め、小谷家親族の将来にも関わることを踏まえながら、家族の心情にも配慮し時間をかけて慎重に話し合いを重ね、私有財産である住宅を地域の貴重な文化遺産とする可能性を模索。

2006年 2月= 青木繁《海の幸》ゆかりの地をめぐるコースとして、国交省モデル事業「花海ウォーキング」開催。

2006年 = 春 吉田昌男富崎地区連合区長会長の提案により、「青木繁《海の幸》記念碑を保存する会」、仮立ち上げとなる。

2006年 10月= NPO千葉自然学校との協働により、「富崎・平砂浦地区ガイド講座」開催。

2006年 11月 =JR旅行商品「大人の休日〜青木繁《海の幸》誕生の地と神話のふるさとをめぐる」実施。

2007年 6月 =NPO安房文化遺産フォーラムとコミュニティ委員会の協働により富崎小学校体育館にて、「輝け富崎!コミュニティのつどい」開催。第一部:「歩いて、宝を見つけよう」ウォーキング。第二部は「富崎地区の未来を描こう」と題して、講師には全国生涯学習まちづくり協会の福留強氏(聖徳大学教授)を招き、「地域の宝〜創年と子ども」をテーマに富崎地区活性化のディスカッションを実施。

2007年 春 =小谷家住宅を館山市指定文化財にすることについて、NPO安房文化遺産フォーラムでは文化財専門家をまじえて小谷夫妻と対話。第一段階として、住宅の文化財価値について調査することに合意。

2007年 7月= エコウォーク100選に「平砂浦ウォーク〜画家が愛した漁村コース」が認定される。

2007年 10月 =NPOフォーラムの依頼で、古建築文化財の専門家が住宅の調査と文化財申請用の製図作成。明治20年代を代表する漁村の住宅として文化財的価値があると判明し、小谷氏は指定文化財への申請を決意。

2007年 11月 =小谷氏が館山市教育委員会宛に住宅の文化財指定申請書を提出。2008年度の館山市文化財審議委員会において審議される旨の報告があった。

2008年 1月 =NPOフォーラム、富崎地区連合区長会、「青木繁《海の幸》記念碑を保存する会」の連名で、館山市長・教育長宛てに小谷家住宅と記念碑の保存・活用に関する要望書を提出。

2008年 = 春 富崎地区コミュニティ委員会と協議。「青木繁《海の幸》記念碑保存会」を発展的解消し、正式に「青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会」の設立に向け、準備会発足。地区役員を中心に、石橋美術館・ブリヂストン美術館の学芸員、美術関係者らに広く呼びかけ、発起人を89人とする。

2008年 9月 =「青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会」 設立総会および「設立記念のつどい」を富崎小学校にて開催。事務局はNPOフォーラムが付託された。ホームページを開設し、保存基金を募る。

2009年10月27日、小谷家住宅が「館山市指定有形文化財(建造物)」となる。《海の幸》記念碑建立敷地内に「説明板」設置。

東京・神奈川の美術関係者よりNPO法人海の幸会(仮称)設立準備している旨の報告あり。その関係者から募金活動をはじめ協働事業にしていきたいとの申し入れを受諾。

2010年 =NPO法人青木繁「海の幸」会(大村智理事長・吉岡友次郎事務局長)設立。

2011年 =青木繁没後100年。けしけし祭りに小谷家当主(小谷福哲氏)ほか保存会メンバーが参列。石橋美術館・京都国立美術館・ブリヂストン美術館にて「青木繁展」開催。当会、文化庁「地域の文化遺産を活かした観光振興と地域活性化事業」選定。館山にて「青木繁《海の幸》フォーラム」等開催。

2012年 =当会、文化庁「地域の文化遺産を活かした観光振興と地域活性化事業」選定。館山市の「ふるさと納税」にて「小谷家住宅の保存活用の支援に関する事業」を選択指定する制度が導入。

2013年 = 文化庁「地域の文化遺産を活かした地域活性化事業」選定。

2014年 = 文化庁「地域の文化遺産を活かした地域活性化事業」選定。

2015年 = 文化庁「NPO等による文化財建造物の管理活用事業」選定。

2014~2016年 = 小谷家住宅の修復工事。

2016年
4月24日 青木繁「海の幸」記念館 オープニングセレモニー。
4月29日~5月9日 記念館オープニング特別公開

2017年
4月29日~5月7日 記念館 1周年記念

2018年
4月28日~5月6日 記念館2周年記念/ゴールデンウィークまつり
青木繁「海の幸」記念館・小谷家住宅が「ちば文化資産」に選定される。

2019年
4月27日~5月6日 記念館3周年記念/海とアートの学校まるごと美術館

2020年

2021年

2022年
4月1日 団体名を青木繁「海の幸」記念館を保存する会に改称。